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第118回学術集会(平成21年11月7日(土),8日(日))
【一般演題】
卵巣腫瘍2 紅皮症を契機に発見された腹膜癌の1例
飯ケ濱 悠美, 鹿島 大靖, 安藤 大史, 島田 智聡, 小林 裕子, 橘 涼太, 高津 亜希子, 鈴木 昭久, 宮本 強, 堀内 晶子, 塩沢 丹里
信州大学産婦人科
紅皮症は全身の皮膚の潮紅と落屑を主徴とする皮膚病変で,内臓疾患に関連した皮膚疾患(デルマドローム)として重要であり,特に悪性腫瘍に関連したものは腫瘍性紅皮症と呼ばれる.その多くは血液腫瘍に関連したものであるが固形癌に随伴する紅皮症も報告されている.今回,紅皮症を発症し原因の精査により腹膜癌が発見され,その治療とともに皮膚病変の軽快を認めた1例を経験したので報告する.患者は75歳の女性で,全身の皮膚発赤と落屑を認め,近医皮膚科にてステロイド軟膏および抗ヒスタミン剤を投与されたが改善しないため当院皮膚科を受診したところ,紅皮症と診断された.紅皮症の原因検索の結果,CA125の上昇(503U/ml)およびCT上多数の腹膜播種病変が認められたが,MRIでは子宮および付属器に異常は認められなかった.またPETにて肝上面,大網,ダグラス窩腹膜,回盲部に集積を認め腹膜播種が疑われた.腹壁の紅皮症に対する侵襲を避けるため腹腔鏡により原発巣を検索したところ,腹腔内に広範囲に播種巣を認めたが両側の卵巣には明らかな異常を認めず,回盲部の腫瘤も播種巣であったため,虫垂を播種巣とともに摘出した.摘出物の病理診断は漿液性乳頭状腺癌であったため腹膜癌と診断した.術後20日目より顔面,前腕の皮疹は軽快傾向を認めた.術後28日目よりパクリタキセル・カルボプラチン療法を開始したところ,CA125は速やかに低下し皮疹も徐々に軽快した.手術療法を提案したが同意が得られなかったため同化学療法を継続しているが,紅皮症,腹膜癌ともに再燃を認めていない.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 46(3)
318-318, 2009
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