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第110回学術集会(平成17年10月15日(土),16(日))
【一般演題】
卵巣癌(1) 術前動注化学療法が奏功した原発不明癌の一例
野池 雅実1), 石橋 武蔵1), 横西 清次1), 中澤 功2)
独立行政法人国立病院機構松本病院産婦人科1), 独立行政法人国立病院機構松本病院研究検査科2)
今回我々は,原発不明癌に対し,術前動注化学療法が奏功した症例を経験した.症例は41才,1回経産婦.H15年8月,月経不順・不正性器出血を主訴に当科を受診した.子宮膣部細胞診,内膜組織診にて悪性所見を認めず,MRI画像上,子宮筋腫と診断された.その後,H16年9月,残尿感・水様性帯下の増加を主訴に当科を受診した.その際,臍高にまで達する骨盤内腫瘍を認めた.子宮膣部及び体部の細胞診にてclassV,子宮体部,子宮頚管部の組織診ではいずれもAdenocarcinonomaG3であった.MRI画像上,子宮及び卵巣は一塊となって腫大し,原発は不明であった.1年前のMRI画像との比較では,左の卵巣が急激に大きくなり,子宮に浸潤したという印象であった.内診及び画像上,病変が骨盤壁にまで達していたため,術前に動注化学療法(タキソール,パラプラチン療法)を2回施行した.治療前に高値だった腫瘍マーカーは低下し,腫瘍も縮小したため,手術療法(単純子宮全摘術,両側付属器摘出術,大網切除および直腸部分切除術,リンパ節生験)を施行した.摘出物の肉眼的所見では子宮頚部を中心に体部に連続して腫瘍の残存を認めるものの,子宮頚管及び子宮内膜はほぼ平滑で,子宮表面(内膜症病変が悪性化し,もしくは左卵巣)から子宮内部と直腸に腫瘍の浸潤がおこった印象であった.病理組織上,左の卵巣に悪性所見はなく,また,癌の浸潤と思われた直腸にも癌の残存は認められなかった.子宮頚部から体部にかけての腫瘍の組織像はendometrioid adenocarcinomaであった.その後,全骨盤照射(50.4 G)を施行,腫瘍マーカーも正常化した.現在外来にてフォローアップ中であるが,再発兆候を認めていない.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 42(3)
327-327, 2005
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