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第110回学術集会(平成17年10月15日(土),16(日))
【一般演題】
妊娠・分娩(7) 悪阻症状を呈した2症例
西村 真純, 沼尾 彰子, 菊地 信三, 金井 雄二, 望月 純子, 天野 完, 海野 信也
北里大学産婦人科
妊娠初期に妊娠悪阻と診断し治療を開始したが,他疾患であった2症例を経験したので報告する.【症例1】27歳,0経妊0経産,妊娠10週6日,上腹部痛と嘔吐を主訴に前医を受診,症状軽快しないため紹介受診となった.血液生化学検査でGOT/GPTは90/69 IU/Lと上昇し,触診上肝腫大,硬結を認め,超音波検査で肝両葉に多発性腫瘤を認めた.注腸造影にてS状結腸癌が疑われた.また腹部XPでイレウスと診断し,イレウス管を挿入した.,11週1日,人工妊娠中絶術施行し,その後結腸亜全摘,リンパ節廓清,人工肛門造設術を施行するも術後8日,肝不全,腎不全のため死亡した.【症例2】33歳,0経妊0経産,妊娠11週,嘔気,食欲低下を主訴に入院し,VitB12補充点滴加療を受けた.14週頃より,精神症状,行動異常が出現し,精神疾患疑いで14週3日,当院紹介受診となる.入院時血清Caは16.9 mg/dLと高値で,fT3(6.44 pg/mL)fT4(3.53 ng/mL)と上昇を認めた.14週6日,人工妊娠中絶術施行.輸液,エルシトニン投与にてCa値は低下し症状は改善した.その後甲状腺超音波検査で,右葉背側に33×20×13 mmの充実部分を認め,副甲状腺腫大が疑われた.TPH関連タンパク(TPHrP)は8.0 pmol/Lと高値で,Tc-99mMIBI所見から,原発性副甲状腺機能亢進症と診断,上皮小体部分(右上1腺)切除術を施行した.術後経過は良好である.妊娠悪阻症状に類似した症状を呈した2例を経験したが,妊娠初期に嘔気,嘔吐を訴える場合には他疾患の可能性も念頭においた対応が必要である.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 42(3)
344-344, 2005
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