|
<< 学会誌へ戻る
<< 前のページへ戻る
第110回学術集会(平成17年10月15日(土),16(日))
【一般演題】
分娩・産褥 子宮内反症が増えている―子宮体部無力症化?
佐々木 純一1), 野末 彰子1), 岩下 寛子1), 竹島 絹子2), 山中 明香2), 安部 加奈子2)
総合守谷第一病院産婦人科1), 筑波大学臨床医学系産婦人科2)
子宮内反症の頻度は一般的には2000〜20000分娩に1例といわれており,まれな疾患であるとされている.我々の施設では平成14年1月から平成17年6月までの2300例の分娩に対し,7例もの子宮内反症症例を経験した(経膣4例,帝切3例).これらの症例を検討すると,従来本症で典型的とされてきた疼痛を伴う大出血に引き続きショックに陥るタイプ(典型例)の経膣分娩例が1例あり,輸血と麻酔下での整復を必要とした.その他の経膣分娩3例は,出血はやや多めではあるが輸血は不要で疼痛はほとんどなく,胎盤娩出後の内診でようやく発見された.このうち2例は無麻酔下で,1例では静脈麻酔下で比較的容易に用手整復が行なえた.これらの3例は症状は軽く容易に整復が可能であり,非典型例とも呼び得るものであった.帝王切開時に内反が生じた3例では,術中容易に整復を行うことができ,「非典型例」と考えられた.なぜこのように「非典型例」が増加したかについては,1.児分娩後早期からの臍帯牽引2.子宮収縮剤(マレイン酸エルゴメトリン)の使用中止3.子宮体部無力症化などが原因と考えられる.帝王切開時の胎盤娩出では臍帯の早期牽引をせざるを得ないが,演者の経験では少し前までは内反症が起こったことはなかったが,最近相次いで3例を経験していることを考えると,近年の日本人妊婦では児娩出後の子宮体部の無力症化が生じているのではないかと推察される.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 42(3)
356-356, 2005
|