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第110回学術集会(平成17年10月15日(土),16(日))
【一般演題】
卵巣癌(4) 卵巣境界悪性腫瘍術後(リンパ節郭清施行)下肢リンパ管炎を繰り返した1例
近藤 壯, 伊東 和子, 山田 智子, 大野 珠美, 山崎 悠紀, 岡 賢二, 芦田 敬, 加藤 清, 塩沢 丹里, 小西 郁生
信州大学産婦人科
婦人科腫瘍に対する手術療法で骨盤内リンパ節郭清を行った場合,術後のリンパ浮腫,リンパ嚢胞,リンパ管炎を発症し,治療に苦慮する場合がある.今回われわれは,他院にて骨盤内リンパ節郭清を含む手術を施行された卵巣粘液性境界悪性腫瘍の1例でリンパ管炎を繰り返した症例を経験した.症例は22歳,主訴は下腹部腫瘤,未婚未経妊,現病歴は1週間前より下腹部腫瘤に気づき,1999年5月当科に初診となった.超音波断層像で骨盤腔内に径10 cmの,多嚢胞性腫瘤を認め,血中腫瘍マーカーはCA125,CA19-9,CEA,SCC,AFPのいずれも正常範囲内であった.その後,他病院にて右卵巣腫瘍摘出術を施行され,粘液性境界悪性腫瘍と診断され,さらに前医にて骨盤内および傍大動脈リンパ節郭清術,大網切除術を施行された.術後,右骨盤腔内に径9cmのリンパ嚢胞が生じ,経過観察のため10月当科に紹介となった.超音波断層像にて右骨盤内リンパ嚢胞を認めるも感染徴候はなく,経過観察とした.12月,発熱と右鼠径部皮膚の発赤を認め,リンパ嚢胞の感染と診断し,抗生剤にて保存的治療を行い2000年3月にはリンパ嚢胞は消失した.その後,数ヶ月毎に右下肢リンパ管炎を発症し,保存的治療で軽快した.6月妊娠(6週)が成立し,経過中は右下肢リンパ管炎を7回発症したが,2004年2月(妊娠39週)男児を経腟分娩した.その後も3〜4週に1回のペースで右下肢リンパ管炎を発症したが,2004年7月を最後に軽快している.本症例より骨盤内リンパ節郭清術後の妊娠中は,リンパ管炎の発症が頻回となる可能性が示唆された.また,卵巣境界悪性腫瘍の治療法では通常リンパ節郭清は施行しないことを再認識した.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 42(3)
375-375, 2005
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