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第111回学術集会(平成18年6月18日(日))
【シンポジウムI】
ARTにおける出生前診断と周産期予後 3.ARTの統計からみた周産期データ
齋藤 英和
国立成育医療センター・周産期診療部・不妊診療科
近年のライフスタイルなどの変化により,晩婚化,子宮内膜症の増加,クラミジア感染症などの性病罹患の変化,メタボリックシンドロームの患者の増加,男性不妊因子の増加し,生殖医療技術はその必要性を増している.日本産科婦人科学会では今後インターネットを用いて,個票登録を実施し,日本における生殖補助医療(ART)の動向を把握し,その傾向を公表することにより会員や治療を受ける患者に寄与していこうと考えている.しかし,平成15年分までの治療は,日本産科婦人科学会・倫理委員会・登録・調査小委員会と内分泌委員会の2つの調査が別々に行ってきた.登録・調査委員会の調査は施設ごとの調査であり,内分泌委員会の調査は個票を用いた調査である.平成16年分,17年分,18年分のART治療の調査は登録・調査委員会の施設ごとの調査のみを行ない,平成19年からの治療はインターネットを用いた個票のみの登録となる.しかし,正確なARTデータを公表するためには,会員の協力が鍵を握っている. 平成15年に体外受精・顕微授精・凍結融解胚・卵による治療周期は総計,101,905周期であった.顕微授精の治療周期数は近年急速な増加をしめしていたが,平成16年治療分では顕微授精の治療数は38,871周期と初めて体外受精の治療数38,162周期を越えた.体外受精,顕微授精,凍結胚を用いた治療の妊娠率は胚移植あたり,それぞれ29.8%,26.9%,31.6%であり,移植あたりの生産率はそれぞれ,19.8%,18.0%,21.2%であった.また,それぞれの,妊娠あたりの多胎率は18.9%,16.2%,13.1%であった. また,生殖内分泌委員会の個票を用いた調査では,平成15年の体外受精・顕微授精・凍結融解胚・卵による治療周期は総計,46339周期(登録・調査委員会の45.5%)となった.40歳以上の治療周期の率は体外受精で26.7%顕微授精で31.8%,凍結融解胚による治療で19.3%と,顕微授精で最も高く凍結融解胚による治療で最も低かった.胚移植数では,依然4個以上胚移植している周期が体外受精と顕微授精の治療を会わせると3.1%あり,凍結融解胚による治療で2.5%と認められた.妊娠週数36週未満の早産は体外受精と顕微授精の治療を会わせると19.0%あり,凍結融解胚による治療で11.7%で,凍結融解胚による治療で低値であった.死産と新生児死亡は体外受精と顕微授精の治療を会わせた周期ではそれぞれ0.9%,0.4%あり,凍結融解胚による治療ではそれぞれ0.5%,0.5%であった.また,先天異常児の率は出産児の0.97%であった. 今後は,まず,すべてのART出産児の状態を正確に調査するシステムを確立することと,ART児の長期予後調査システムを確立していく必要がある.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 43(2)
114-114, 2006
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