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第111回学術集会(平成18年6月18日(日))
【一般演題】
子宮内膜症 腹膜炎様症状を呈し再手術を要した子宮内膜症術後出血の一例
古澤 嘉明, 山本 由紀, 杉林 里佳, 高野 忍, 古賀 祐子, 藤原 礼, 鈴木 真, 大塚 伊佐夫, 己斐 秀樹, 清水 幸子, 亀田 省吾
亀田総合病院産婦人科
術後出血は非常に重要な手術合併症の一つである.その対応として再手術を余儀なくされる症例もあるが保存的に経過観察が可能な症例もある.今回我々は子宮内膜症性嚢胞に対する腹腔鏡下手術後に術後出血を来たし,出血量が比較的少なく既に止血していると考えられ保存的に経過観察したところ強い腹膜刺激症状のため再手術を要した症例を経験したので報告する. 症例は34歳,3経産.月経困難症にて当科初診.初診時内診,超音波検査にて左卵巣に4cm大の多房性腫瘤を認め子宮内膜症性嚢胞と診断し腹腔鏡下左卵巣腫瘍摘出術,付属器周囲癒着剥離術を施行した.手術時間は2時間7分,出血量は20mlであり,ReAFS分類25Pointsであった.術翌日には疼痛も軽度であり歩行可能となったが術後3日目下腹痛の増強,貧血の進行を認めたため腹部超音波検査施行したところ左付属器周囲に6cm大の血腫形成を認め,ダグラス窩に液体貯留像を認めた.超音波所見から推定出血量は300ml以下と考えられ血圧,脈拍にも変動が無く既に止血していると考えられたため保存的に自然吸収を待つ方針とした.しかし,貧血の進行は認めないものの腹膜刺激症状の増強と炎症反応が高度であり術後10日目再手術の方針とした.腹腔鏡下血腫除去,ドレナージを施行し,以後症状は軽快した. 本症例の腹膜炎様症状は抗生物質投与反応せず,腹腔内貯留物の細菌培養も陰性であり,貯留した血液の吸収過程における炎症が原因と考えられた.出血量が比較的少ない症例であっても強い炎症反応を示す症例では早期の血腫除去,腹腔内洗浄が必要であると考えられた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 43(2)
134-134, 2006
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