|
<< 学会誌へ戻る
<< 前のページへ戻る
第111回学術集会(平成18年6月18日(日))
【一般演題】
妊娠・分娩1 妊娠中期に発症し,経過が遷延した急性膵炎合併妊娠の一例
奥平 忠寛1), 村岡 光恵1), 佐藤 真之介1), 倉田 章子1), 太田 博明2)
東京女子医科大学東医療センター産婦人科1), 東京女子医科大学産婦人科2)
妊娠中に急性膵炎を発症することは稀であるが,時に急速に重症化するため母体死亡に至ることもある.我々は妊娠中期に発症した急性膵炎の一例を経験した.症例;25歳G1P0.既往歴;特記事項なし.喫煙・飲酒歴;なし.身長149cm,非妊時体重37.5kg,非妊時BMI16.9.妊娠23週に腹痛と背部痛が出現し,24週1日外来受診.腹部全体に軽度の自発痛あるも,圧痛および反跳痛はなく,切迫早産徴候はなかった.血液検査にて白血球数14700/mm3,アミラーゼ(AMY)1102U/l,リパーゼ385U/lと膵酵素の異常高値と,血清総蛋白,血清の低値の為重症度判定基準より中等症の急性膵炎と診断し,同日入院,絶食下に輸液とメシル酸ガベキサート(FOY)点滴静注を開始.24週6日,AMYは320U/lに低下し,経口摂取開始したが,その後AMY 900U/lと再上昇したため,FOY投与を継続しつつ,経過観察.27週でAMY値は521U/lとなりFOYを中止し,メシル酸カモスタット経口に変更.28週に施行したMagnetic resonance cholangio pancreatographyにて胆石あよび膵胆管合流異常を認はられなかった.治療経過中,胎児発育は異常なし.37週6日,2630g男児をApgar score 9/10にて正常経腟分娩.分娩後6か月でAMY値は158U/lと正常化した.妊娠中の急性膵炎の発症は妊娠後期に多く,妊娠による胆汁うっ滞や胆石,高脂血症の関与が示唆されている.本症例はこれらの誘因なく,妊娠中期に発症し,経過が遷延したが,重症化することなく,母児ともに良好な結果を得た.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 43(2)
138-138, 2006
|