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第111回学術集会(平成18年6月18日(日))

【一般演題】
妊娠・分娩9
胎児頻脈から母体甲状腺機能亢進症が判明した1例


佐近 普子, 芦田 敬, 近藤 沙織, 長田 亮介, 大平 哲史, 金井 誠, 小西 郁生
信州大学産婦人科


 甲状腺機能亢進症は妊娠のおよそ0.1%から0.4%に合併するといわれている.コントロール不良な場合には,流早産や死産,子宮内胎児発育遅延,妊娠高血圧症候群,甲状腺クリーゼ,心不全などを合併するため,早期に診断し治療を行い,コントロールすることが重要である.今回胎児頻脈を契機として,母体甲状腺機能亢進症を診断した症例を経験した.症例は,34歳,2回経妊1回経産,既往歴に特記すべきことはなかった.妊娠34週の妊婦健診時に,胎児頻脈(190bpm)を指摘され,精査したところ,TSHが0.005μIU/mlと低下し,遊離型T3が29.7pg/ml,遊離型T4が7.8ng/dlと高値を示し,甲状腺機能亢進症と診断され,当科紹介となった.入院時,母体には自覚症状はなく,頻脈(130回/分)と高血圧(160/90),振戦を認めた.児の発育は週数相当であり,NSTモニターにて,頻脈であったが,細変動,一過性頻脈を認めた.甲状腺機能亢進症の治療目的に,抗甲状腺薬とβブロッカーを投与したところ,翌日には,母体心拍数は90回/分に低下し,胎児心拍数も160bpmに低下した.甲状腺ホルモンも低下傾向であったため,経過観察したところ,自然陣痛発来し,妊娠36週3日に2750gの女児を経膣分娩した.甲状腺クリーゼの発症はなく,分娩・産褥経過は良好であった.児は甲状腺機能亢進症を発症したため,生後8日目より,治療が開始された.甲状腺機能亢進症は,本症例のように自覚症状に乏しく,診断が遅れる場合もあり,また診断されていない場合には,母児ともに予後不良な疾患である.妊婦健診においては,母体のバイタルサインに注意し,頻脈などを認めた時には,本疾患を念頭におくことが,重要である.


日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 43(2) 154-154, 2006


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