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第111回学術集会(平成18年6月18日(日))
【一般演題】
悪性卵巣腫瘍1 未成熟奇形腫治療後12年で成熟奇形腫を発症し,子宮内膜症病変を伴う神経こう腫を認めた1例
栗原 聡美, 原田 竜也, 小坂 元宏, 宮坂 尚幸, 久保田 俊郎, 麻生 武志
東京医科歯科大学生殖機能協関学
成熟または未熟奇形腫に合併して神経こう組織が腹膜や大網に播種したものを腹膜神経こう腫症と呼び,ほとんどの例で良性といわれているが,早期に未熟神経こう播種を再発した例も報告されている.また腹膜神経こう腫症と症状を伴わない子宮内膜症の関連も発見されている.一方で未熟奇形腫のretroconversionすなわち成熟化という現象も報告されている.今回我々は未熟奇形腫(Grade1)治療後12年で成熟奇形腫を発症し,開腹時に子宮内膜症病変を伴う神経こう腫を認めた1例を経験したので文献的考察を含め報告する.症例は20歳,0回経妊.12年前の8歳時に巨大腹部腫瘍を発症し左付属器切除術が施行され未熟奇形腫(Grade1)と診断され術後補助化学療法(CDDP,VBL,BLM)が行われた.腹部膨満感を自覚し近医を受診した際に巨大腹部腫瘤を指摘され当科紹介受診となった.超音波断層法,CT,MRIにて臍上に及ぶ単房性で充実成分を含まない腫瘍を認めた.腫瘍マーカーの上昇を認めなかった.開腹時30cm大の単房性卵巣腫瘍を認め内容液は淡黄色漿液性で,表面に子宮内膜症病変を認めた.右仙骨子宮靭帯付着部に2cm大の硬結があり,左卵巣嚢腫摘除術及び仙骨部腫瘍切除術を施行した.術後病理組織診断は,卵巣腫瘍は成熟嚢胞奇形腫,仙骨部硬結は子宮内膜症組織を合併する腹膜神経こう腫症だった.未熟奇形腫化学療法後は数ヶ月から数十年単位での腹膜神経こう腫症発症やその悪性化が報告されている.また今回の成熟奇形腫は未熟奇形腫のretroconversionだったとも考えられる.今後も再発はありうるので注意深い経過観察が必要である.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 43(2)
169-169, 2006
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