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第111回学術集会(平成18年6月18日(日))
【一般演題】
悪性卵巣腫瘍1 術前腫瘍マーカーが正常値であった卵巣漿液性嚢胞腺癌の1例
福田 麻実, 江澤 正浩, 青木 千津, 中熊 正仁, 古川 隆正
上尾中央総合病院
卵巣腫瘍の術前診断において,腫瘍マーカーは良・悪性の判定に有用な指標のひとつである.今回我々は,MRIにて悪性が疑われたにもかかわらず術前腫瘍マーカーが正常値で術中迅速病理検査にて漿液性嚢胞腺癌と診断された1例を経験したので報告する. 症例は56歳,4回経妊2回経産,下腹部腫瘤を訴え近医受診したところ,腹部超音波にて卵巣腫瘍を疑われたため,平成18年1月20日 精査目的で当院を紹介受診となる.初診時内診にて新生児頭大の腫瘤を触知,超音波断層法,CT,MRIにて子宮,左卵巣は正常大,右卵巣に隔壁,充実部分を伴う腫瘍を認めた.術前腫瘍マーカーはCA125:19.1U/ml,CA 19-9:21U/ml,CA72-4:2.5 U/ml,SLX:27.0U/ml,CEA:1.3ng/mlと何れも正常値を示した.境界悪性または悪性である可能性を念頭に,平成18年2月13日に開腹,右卵巣に15×13cm,1,120gの腫瘍が認められた.術中迅速病理診断にて漿液性嚢胞腺癌であったため腹式単純子宮全摘術,両側附属器切除術,大網切除術,骨盤リンパ節廓清,傍大動脈リンパ節生検を施行した.術後病理診断にて漿液性嚢胞腺癌Ia期と診断された. 腫瘍マーカーは悪性腫瘍の診断には大きな意義があるが血中濃度が低く,初期癌や再発初期などでは検出が難しい場合がある.卵巣腫瘍の術前診断においても画像診断と共に有用であるが,確定診断は術後の病理検査によって行われる.卵巣腫瘍の治療において悪性である可能性が完全に否定できない症例では,術中の迅速病理診断を行うことが術式や治療方針の決定に重要であると再認識した.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 43(2)
171-171, 2006
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