|
<< 学会誌へ戻る
<< 前のページへ戻る
第111回学術集会(平成18年6月18日(日))
【一般演題】
妊娠・分娩10 妊娠蛋白尿の周産期予後
長谷川 ゆり, 松田 秀雄, 川上 裕一, 芝崎 智子, 高橋 宏典, 吉田 昌史, 田中 雅子, 古谷 健一
防衛医科大学校産婦人科
【目的】診断基準改訂により妊娠蛋白尿は妊娠高血圧症の病型分類には含まれなくなった.しかし,妊娠中に見られる「高血圧を呈さない蛋白尿」症例の中には妊娠中に発症する腎疾患等が隠されている可能性がある.今回,妊娠中に蛋白尿を呈した症例の周産期予後を検討した.【方法】2003年1月1日から2005年12月31日の間,当院で分娩した1687例を対象とした.妊娠20週以降に尿蛋白(dipstickで1+が2回以上もしくは2+以上)を認め,合併症のない症例は134例であった.134例を蛋白尿のみ呈した群(A群),高血圧を発症した群(B群),腎疾患を発症した群(C群)に分類し,周産期予後(分娩週数,出生体重,アプガースコア,緊急帝王切開率)について検討した.さらにA群を尿蛋白量によって分類(A1群:尿蛋白1+2回以上のみ,A2群:尿蛋白2+以上)した.妊娠経過に異常なく合併症のない症例806例をコントロール群とした.【成績】症例の内訳はA群86例(64.18%),B群45例(33.58%),C群3例(2.23%)であった.コントロール群とA群の間には4項目とも有意差はなかったが,出生体重においてコントロール群よりA2群の方が少ない傾向があった(p=0.054).一方,妊娠中に高血圧のない蛋白尿を認めた106例のうち20例(18.9%)は結果的に妊娠高血圧腎症や腎疾患を発症する「ハイリスク妊娠」であった.【結論】妊娠蛋白尿の周産期予後は良好と言えるが,より高度な蛋白尿はSFDと関係があるかも知れない.高血圧がなくとも20週以降に蛋白尿を呈する症例はハイリスク群として慎重に観察していく必要がある.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 43(2)
178-178, 2006
|