|
<< 学会誌へ戻る
<< 前のページへ戻る
第111回学術集会(平成18年6月18日(日))
【一般演題】
妊娠・分娩11 黄疸を初発として発症しDIC,心不全,深部静脈血栓症を併発した臨床的急性妊娠脂肪肝の一例
猪爪 裕香, 長橋 ことみ, 望月 亜矢子, 高荷 理子, 河村 隆一, 木村 聡, 西口 富三, 杉村 基, 金山 尚裕
浜松医科大学産婦人科
急性妊娠脂肪肝(以下AFLP)は1/10,000(例/妊娠数)の頻度で発症する比較的まれな疾患であるが,症状は劇症型で母児ともに予後不良のことが多い.今回我々は黄疸を初発として発症し産褥DIC,心不全,深部静脈血栓症(以下DVT)を併発したため診断・管理が困難であった,臨床的にAFLPを強く疑う症例を経験したので報告する.症例は31歳4回経妊1回経産.家族歴に特記事項なし.妊娠36週0日前期破水にて近医入院,同日3,012g男児を正常経膣分娩した.分娩直前より黄疸が認められ,分娩後弛緩出血も認められたため当院へ緊急産褥搬送された.当院入院時T-Bil 10.6mg/dl,GOT 131IU/l,GPT 148IU/l,FDP-DD 33.5μg/ml,Fbg<50mg/dl,Plt 15.3×104/μlであり,抗ショック抗DIC療法と弛緩出血に対する治療を開始した.しかし弛緩出血は継続しショック・DICの改善がみられず,産褥2日目に子宮動脈塞栓術を施行し止血した.T-Bil高値は遷延,経過中に低血糖,心不全,DVT,膿胸を併発し管理に苦渋したものの,黄疸などの症状や他の血液検査所見は徐々に改善したため産褥30日目の退院となった.本症例はDVTに対する抗凝固療法のため確定診断に必要な肝生検が実施できなかったが,諸検査,臨床症状より肝炎やHELLP症候群は否定的であり,臨床的にAFLPが最も疑われた.通常のショック,DICの管理以外にも低血糖,DIC後のDVT等にも注意が必要であり,その管理について文献的考察を加える.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 43(2)
181-181, 2006
|