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第111回学術集会(平成18年6月18日(日))
【一般演題】
妊娠・分娩12 帝王切開後にMRSA敗血症をきたした1例
大井 由佳, 中山 昌樹, 池田 万里郎, 沢井 かおり, 菊地 紫津子, 村瀬 真理子, 佐藤 綾
横浜労災病院産婦人科
産褥熱は,かつて妊産婦死亡の原因の多くを占めていたが,近年の抗生物質や衛生環境の進歩によりその予後は大きく改善している.しかし最近,原因菌としてグラム陰性桿菌に代わりMRSAなどの耐性菌が出現し,その管理に難渋するようになった.今回我々は,緊急帝王切開後にMRSA敗血症をきたした1例を経験したのでここに報告する.症例は26歳,0妊0産,31週6日切迫早産,分娩不可避のため当院に産科救急システムで母体搬送され,同日緊急帝切を施行した.児は男児,1975g,Ap8/9,UApH7.343で娩出され,当院NICU入院となった.母体は術後5日目に40℃の弛張熱が出現し,WBC15300,CRP11.5と炎症所見を認めた.起因菌検索を行い,FMOX,CZOPを投与したが症状は軽快しなかった.術後10日目に腟培養,動脈血培養からMRSAが検出されたためABK200mg/日の投与を開始した.弛張熱は消失したが,38℃台の発熱は持続し,MRIで子宮切開部付近に高信号域を認めたため子宮切開部膿瘍の診断で術後18日目に開腹洗浄ドレナージ術を施行した.子宮,付属器に異常所見なく,膀胱子宮窩に2cmの膿瘍を認め,付近を開放して腹腔内を洗浄し,ドレーンを留置し閉腹した.術後39℃の発熱が持続し,腹部創部感染を認め創部培養からMRSAが検出された.創部を開放し洗浄を連日施行したところ解熱し,再手術後20日目WBC7200,CRP1.5に低下,退院となった.本症例では,子宮切開部の感染が疑われ,子宮摘出も考慮しつつ再開腹手術を施行したが,子宮外に膿瘍を形成していたため子宮温存が可能であった.MRSA感染には抗MRSA薬投与が有効であるが,効果がみられない場合には外科的処置が有効であると考えられた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 43(2)
181-181, 2006
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