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第111回学術集会(平成18年6月18日(日))
【一般演題】
妊娠・分娩14 大動脈炎症候群合併妊娠の臨床的検討
酒井 牧知子, 牧野 康男, 松下 恵理奈, 秋澤 淑香, 川道 弥生, 梅崎 泉, 三谷 穣, 松田 義雄, 太田 博明
東京女子医大産婦人科
目的:大動脈炎症候群は若年女性に発症する動脈の炎症を主体とする膠原病である.本症の妊娠例の多くは母児ともに良好な経過をとるが,心不全や妊娠高血圧腎症に移行する場合や,子宮内発育遅延や流産・死産の増加も報告されており厳重な管理を必要とする.今回,我々は2000年からの6年間に本症候群合併妊娠の5例を経験したので,若干の文献的考察を含めて報告する.成績:(1)妊娠前のNYHAは全例II度以下で,妊娠・分娩期間を通じ,高血圧や心不全の発症はなく,母児の死亡例もなかった.(2)母体の平均年齢は28歳(24〜35歳),初産婦は4例であった.(3)分娩時平均週数は38週で,1例は妊娠35週での上行大動脈(Ao)径の増大による人工早産例であった.(4)分娩様式は1例が経腟分娩,4例が帝王切開であった.帝王切開の適応としては,分娩停止2例,Aoの増大による心機能の低下1例,左主幹部動脈拡張術後による選択的帝王切開が1例であった.(5)新生児の転帰は,平均出生体重2,768g,SFD1例,Apgar score7点未満(1分)2例で,全例生存した.(6)人工早産の1例は17歳で発症し,22歳よりプレドニン5mg/日を投与されていた.24歳で,妊娠35週でAo径が38mmから45mmに拡張したため,同日,帝王切開にて,2,406g,Apgar score6/9点の男児を娩出し,術後は母児共に良好に経過した.結論:今回の我々の経験した大動脈炎症候群合併妊娠の5例は,母児双方の合併症を認めなかったことが良好な結果に繋がった.しかし,Aoの拡張のため,分娩様式と分娩方法が変わる症例もあるので,マルファン症候群に準じたAoの詳細な経時的観察が必要と思われた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 43(2)
185-185, 2006
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