|
<< 学会誌へ戻る
<< 前のページへ戻る
第111回学術集会(平成18年6月18日(日))
【一般演題】
胎児異常2 21トリソミーに一過性骨髄増殖症(transient abnormal myelopoiesis)が合併した2例
永松 健, 曽根 国瑞, 坂巻 健, 山下 隆博, 亀井 良政, 藤井 知行, 上妻 志郎, 武谷 雄二
東京大学産婦人科
transient abnormal myelopoiesis(TAM)は21トリソミーの約10%に合併する一過性の骨髄増殖異常症である.その多くが生後8週以内に白血球増多で発症し,無治療で数週間から約3ヶ月の間に自然軽快するため,比較的予後良好な疾患とされていたが,近年重篤な肝障害の併発,数年以内の白血病の発症など,実際にはかなり予後の悪い疾患であることが示され始めている.当院で経験したTAMの重症例で出生後に治療を必要とした2症例について考察を交えつつ発表する.症例1:37歳5G2P.33週より胎児の心嚢液貯留と肝腫大を認め,その後心嚢液量増加し,胎児のwell-beingの悪化が懸念され34週で帝王切開での分娩となった.出生後に新生児の白血球数219000/μl,末梢血中に芽球の出現を認めTAMが疑われ,染色体検査により21トリソミーが確認された.TAMに対する治療として交換輸血,prednisoloneの投与を行い日齢25には芽球が消失,日齢49に退院となった.症例2:31歳1G0P.出生前には妊婦自身の社会的要因のため十分な検索を行うことが出来ないまま36週で破水し,足位のため緊急帝王切開での分娩となった.出生直後新生児の顔貌より21トリソミーが示唆され,白血球数203000/μl,末梢血中の芽球73%でありTAMの合併が考えられた.またエコーにて心内膜床欠損が確認された.Pltの低下,DICが進行し,TAMに対してはステロイド,交換輸血,AraC投与による治療が行われた.日齢20に芽球が消失して,TAMが寛解した後にも,肝不全に伴うDICが非常に厳しく,全身状態が悪化し日齢65に死亡となった.今回,提示する症例は十分なインフォームドコンセントのもとでの発表である.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 43(2)
202-202, 2006
|