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第111回学術集会(平成18年6月18日(日))
【一般演題】
感染症 Edwardsiella tardaを起因菌とした子宮内感染症の一例
高橋 千果, 池田 仁惠, 松林 秀彦, 佐藤 茂, 中村 絵里, 呉屋 憲一, 鈴木 隆弘, 和泉 俊一郎, 三上 幹男
東海大学専門診療学系産婦人科
Edwardsiella tarda(以下E.tarda)はヘビなど爬虫類の腸内常在菌で,魚類ではヒラメのエドワジェラ病,ウナギのパラコロ病の原因菌となる.ヒトにおいてもごく稀に下痢便・創傷・血液等の臨床材料から検出されるがその病原性や感染経路についての詳細は明らかではない.また,ヒトに感染した場合には胃腸炎が最も多いとされ,腸管以外の感染症では致死率が高いという報告もあり注意が必要である.今回我々はE.tardaが子宮に上行感染したと考えられ,血液培養と子宮筋層内膿瘍からE.tardaを検出した稀な症例を経験したので報告する.症例は43歳,2経妊1経産,既往歴はSLE,脳梗塞,35歳子宮外妊娠にて右付属器摘出.子宮腺筋症にて当院当科定期検診で経過観察していた.2005年10月16日〜18日東南アジア旅行.同年10月28日より38.9度の発熱,下腹部痛を認め当院救急外来受診.婦人科的所見に乏しいものの,血液検査上白血球21000/μl,CRP 5.21mg/dlと感染兆候認め,骨盤腹膜炎の診断で入院となる.入院時の血液培養よりE. tardaが検出されFMOX,IPM/CS,ABKと抗生剤点滴静注するもスパイク熱が続いた.11月11日腹式単純子宮全摘・左卵管切除術施行.子宮筋層内に約1.5×0.8,1.0×0.5cmの膿瘍を認めた.術後速やかに解熱し炎症反応も改善した.子宮筋層内膿瘍培養よりE. tardaが検出され,術後の病理所見も感染を伴う子宮腺筋症であった.本症例はE. tardaが上行感染,子宮筋層内に膿瘍を形成し,骨盤腹膜炎を発症したものと考えられた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 43(2)
206-206, 2006
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