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第111回学術集会(平成18年6月18日(日))
【一般演題】
感染症 流産後変性子宮筋腫に嫌気性菌感染をおこした1例
岩澤 有希, 甲賀 かをり, 児玉 亜子, 中村 久其, 廣井 久彦, 大須賀 穣, 矢野 哲, 武谷 雄二
東京大学女性診療科・産科
妊娠時に変性した子宮筋腫に,度重なる子宮内操作の後嫌気性菌感染をおこし子宮摘出を行った1例を経験したので報告する.【症例】40歳,未婚,未経妊.多発性骨髄腫に対しビスフォスフォネート治療中.前医にて妊娠6週稽留流産と診断され,子宮内容除去術を施行されたものの血清hCG値が下降しないため当院紹介受診.当院来院時は最終月経より妊娠9週3日,血清hCGは96676mIU/mLであった.画像検索では子宮体部後壁に径12cm大の赤色変性した子宮筋腫のほか筋層内筋腫を複数認めた.また,子宮内腔に血流豊富な胎盤を疑わせる像を認めた.以上より胎盤遺残及び絨毛性疾患を鑑別診断とし,再度子宮内容除去術をおこなった.この際子宮筋腫により子宮腔長は20cmと拡大し,胎盤鉗子による操作が困難であったため吸引管を用いて子宮内容を除去した.内容物の病理診断は正常絨毛組織で絨毛性疾患は否定された.しかし,手術後一ヶ月近くにわたり性器出血と下腹痛,腰痛が持続し,抗生剤,子宮収縮剤などにより経過観察していたが,術後46日目に疼痛が増強し入院.子宮に限局する圧痛を認めた.炎症所見は軽度の上昇を認めるのみであったが,CTにて最大の子宮筋腫内部に多数の気泡が確認され,子宮筋腫内の嫌気性菌感染が疑われた.子宮内培養ではBacteroides,Peptostreptcoccus等が検出された.抗菌剤による保存的治療は困難であると判断し,翌日腹式単純子宮全摘術を施行した.摘出子宮は730gで,子宮筋腫割面は褐色に変色し悪臭を伴った.病理所見では子宮筋腫に広範な壊死を認めた.術後は感染が遷延することなく回復し退院となった.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 43(2)
206-206, 2006
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