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		第112回学術集会(平成18年10月29日(日))
  
		【シンポジウムII−2】 
		3.がん治療から女性健康を守るには(女性健康診療の立場から)
  
		倉澤 健太郎 
		横浜市立大学附属病院産婦人科・助手
  
		  
		 子宮頸癌や卵巣癌などの婦人科悪性腫瘍の若年化が社会的な問題となっており,卵巣機能の残されている閉経前女性に対して附属器摘出術を行わざるを得ない場合も少なくない.また,進行子宮頸癌に対する放射線治療のため,治療後卵巣機能不全に陥るケースも存在する.一方,各種診断法・治療法が格段に進歩している現在,Cancer survivorも数多く存在し,がん治療後の日常生活の質の確保は重要な問題となっている.卵巣機能廃絶に伴う症状は,hot flush,発汗,不眠,いらいら,頭痛,めまいなどのいわゆる狭義の更年期症状や,排尿障害,性交障害などが代表的であるが,自覚症状を伴わない高血圧症,高脂血症,糖尿病,骨粗鬆症なども広義の更年期の病態として重要である.  一般に,更年期症状の治療薬の第一選択はホルモン補充療法(HRT)であるが,婦人科癌治療後の場合はHRTが適さない場合もあり,対症療法や漢方薬,選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)などを組み合わせて投与する.  骨粗鬆症においては,その予防が特に重要であり,閉経前の卵巣摘出術によるエストロゲン欠乏状態,がん治療に伴う化学療法(抗腫瘍薬やステロイド),放射線療法,あるいは低栄養状態や日常生活動作の低下などにより,発症のリスクはさらに高まる.一度臨床的骨折を起こせば日常生活動作は極端に制限され,大幅にQOL(Quality of Life)が下がることになる.近年,強力な骨吸収抑制剤であるビスフォスフォネートと選択的エストロゲン受容体作動薬である塩酸ラロキシフェンは骨粗鬆症の標準薬となっている.特にビスフォスフォネートは,破骨細胞のアポトーシスを誘導し破骨細胞への分化誘導を阻害することで強力な骨吸収抑制作用を持ち,閉経後骨粗鬆症のみならず乳がんなどの骨転移,抗ホルモン療法によって誘発されるCTIBL(Cancer Treatment-induced Bone Loss)に対する有効性も確認されている.更に,最近ビスフォスフォネートの血管新生抑制作用も注目されており,婦人科癌の発生抑制や播種進展の抑制効果も報告されている.一方,塩酸ラロキシフェンは,骨折予防効果はもちろん副次的な効果も期待され,閉経後女性のトータルヘルスケアパッケージとしての役割が期待されている.  今回はこれらのがん患者の治療後の問題を捉え,その適切な健康維持を目指した診療について検討を加えたい.
 
  
		日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 43(3)
		253-253, 2006 
		 
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