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第112回学術集会(平成18年10月29日(日))
【ランチョンセミナー4】
4.子宮内膜症とサイトカイン
寺川 直樹
鳥取大学医学部生殖機能学・教授
子宮内膜症合併不妊症患者の腹腔には炎症性サイトカインであるTNFα,IL-6およびIL-8が高濃度に存在し,TNFαとIL-6およびIL-8濃度は相関すること,TNFαは子宮内膜症細胞におけるIL-6およびIL-8産生を促進すること,IL-6はマウス初期胚の発生やヒト精子運動能を抑制すること,IL-8は内膜症細胞の増殖を促進することを明らかにしてきた.そこで,内膜症細胞におけるTNFαによるIL-6およびIL-8産生機序について検討した.患者の同意のもと,手術時に採取した卵巣チョコレート嚢胞壁から内膜症間質細胞を分離培養した.TNFαの存在下にIL-6とIL-8の遺伝子および蛋白発現を検討した.TNFαはIL-6とIL-8の遺伝子発現と蛋白発現を濃度依存性に誘導した.TNFαの細胞内刺激伝達に働くリン酸化IkB(p-IkB)発現およびNF-kB活性を検索すると,TNFα添加によりp-IkBが誘導され,NF-kBが活性化された.NF-kB inhibitorであるTPCKはTNFαによるIL-6とIL-8遺伝子および蛋白発現を抑制した.子宮内膜症細胞を用いた以上の成績から,TNFαはNF-kBを活性化してIL-6とIL-8産生を誘導し,内膜症細胞の増殖と子宮内膜症合併不妊症に関与することが示唆された.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 43(3)
259-259, 2006
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