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第112回学術集会(平成18年10月29日(日))
【一般演題】
妊娠分娩2 急性膵炎合併妊娠の一例
三島 有加, 深瀬 正人, 辻井 篤, 門 智史
沼津市立病院産婦人科
急性膵炎は膵内で膵酵素が活性化され膵自体が自己消化される疾患であるが,壊死膵組織からの分泌物質によって循環不全・呼吸不全・腎不全・DICなど合併することが多い.多くの場合上腹部痛で発症し悪心,嘔吐を伴うが,妊娠による変化で症状や腹部所見が修飾されたり,妊娠悪阻や常位胎盤早期剥離など他の疾患と症状が類似することがあり,正確な診断が遅れやすい.今回我々は比較的初期の段階で診断のついた軽症急性膵炎合併妊娠の一例を経験したので報告する.症例は,35歳,1経産婦,来院時妊娠36週5日,妊娠経過に特記すべきことなし.身長159cm,非妊時体重54kg(BMI:21.4)既往歴 特記事項なし,飲酒 ほとんど摂取なし,現病歴(36週3日)夕食後突然の上腹部痛,背部痛,下痢あり.近医内科受診し,胃薬処方.(36週4日)上腹部痛悪化,嘔吐あり,近医内科にて腹部エコー上胆石が疑われる.(36週5日)疼痛軽減せず,当院内科に救急受診,来院時上腹部全体に圧痛あり,妊娠による緊急疾患鑑別のため当科紹介,診察上,産科的異常はみとめられず再度内科で精査となった.血清AMY3181IU/L,尿中AMY3500IU/Lと膵酵素上昇あり,MRIで膵腫大あり,急性膵炎(軽症)の診断で緊急入院となった.入院後,絶飲食,中心静脈補液,FOY,H2ブロッカー,抗生剤投与にて症状,血液検査改善みとめた.その後予定日超過したため誘発し,40週5日経膣分娩,3408g男児,APS9/9,UApH:pH7.377,BE-4.9 分娩後5日目ERCP行い胆道系に結石等認めず,経過良好のため退院となった.以後現在まで膵炎の再発を認めず,外来経過観察中である.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 43(3)
269-269, 2006
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