|
<< 学会誌へ戻る
<< 前のページへ戻る
第112回学術集会(平成18年10月29日(日))
【一般演題】
妊娠分娩3 小腸を260 cm切除した人工妊娠中絶による子宮頸部前壁穿孔の1例
矢追 正幸, 堀中 俊孝, 濱田 佳伸, 高見沢 実, 坂本 秀一, 大藏 健義
獨協医科大学越谷病院産婦人科
若年妊娠の中絶により小腸切除となった子宮頸部前壁穿孔の1症例を経験した.症例は15歳未婚女性,未経妊.既往歴は特になし.2005年10月,近医より妊娠13週の人工妊娠中絶最中に子宮穿孔を生じ当院へ救急搬送となった.入院時体温36.5℃,脈拍65bpm,血圧118/60mmHg,意識清明.膣内から腸管脱出を認めた.入院時検査では,WBC 10000/μlと軽度上昇を認めた以外に貧血もなく正常値であった.超音波エコー検査所見では,子宮内の羊水量は正常,胎児頭殿長(CRL)63.8mm(13週3日)相当であり胎児心拍を確認した.また,ダグラス窩にecho free spaceは認めなかった.インフォームド・コンセントをおこなった後に手術室へ入室した.開腹所見は,膀胱子宮窩(子宮頸部前面)に小腸が子宮内に侵入している部位を2cm認めた.腸間膜剥離のために切除した腸管の長さは,回盲部より約260cmであった.術中に外科医師と相談し,小腸部分切除をおこない,小腸端々吻合術と腸間膜剥離部の縫合術を行った.また閉腹前に子宮頸部前壁縫合部の止血確認をおこない腹膜以降4層で閉腹した.今回の症例は,紹介医師が早期で適切な判断をおこなった事と家族に対する詳細な説明と誠意を示した事で医師と患者間でトラブルが生じない症例となった.今回腸管が子宮筋層内に侵入し,約2時間圧迫していた部分も含めて病理検査した.その結果は,切除部位に圧座した摘出標本の断端部以外には,腸管の炎症や壊死部分は認めない報告であった.当日,若干の文献的考察を加え報告する.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 43(3)
270-270, 2006
|