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第112回学術集会(平成18年10月29日(日))
【一般演題】
妊娠分娩3 妊娠中に子宮より離断したと考えられた漿膜下子宮筋腫の一例
北川 雅一1), 奥田 美加1), 最上 多恵1), 門脇 綾1), 大井 由佳1), 片山 佳代1), 長谷川 哲哉1), 田野島 美城1), 斉藤 圭介1), 小川 幸1), 高橋 恒男1), 平原 史樹2)
横浜市立大学附属市民総合医療センター母子医療センター1), 横浜市立大学産婦人科2)
緒言)子宮筋腫合併妊娠では,筋腫変性による疼痛や分娩障害の原因となりうるため注意を要する.今回,漿膜下筋腫が妊娠中に子宮より離断したと考えられた症例を経験した. 症例)1回経産婦.妊娠初期に超音波検査で子宮後方に隣接する6.6×5.2cmの充実性腫瘤を認め,漿膜下子宮筋腫または充実性卵巣腫瘍の疑いとして経過観察.妊娠31週時,突然の右側腹部痛を自覚,腫瘤に一致する圧痛を認めた.血液検査所見ではWBC11020,CRP1.84,Hb11.7と,軽度炎症所見を認めた.子宮筋腫の変性痛,又は卵巣腫瘍の茎捻転も否定できなかったが,疼痛は改善傾向にあり経過観察,10日後には疼痛は完全に消失した.帝王切開既往のため,妊娠38週で帝王切開術を施行,子宮の右頭側に10×8cmの弾性硬の腫瘤を認め,一部大網と癒着しており,子宮とは完全に離断していた.また,子宮後壁に約3cm幅の陥凹を認めた.腫瘤の病理組織学的所見は,Necrotic leiomyoma with small amount of viable cellsであった.以上の所見より,妊娠31週時の激しい疼痛の際に,漿膜下子宮筋腫が子宮より離断したと考えた. 考察)漿膜下子宮筋腫の表在血管断裂による急性腹症は,複数の報告例がある.また,由来不明の腹腔内腫瘤が組織診断で卵巣腫瘍と判明する症例はときに経験する.しかし,国内文献を検索した限りでは,妊娠中に漿膜下筋腫が子宮より離断し保存的に観察したとの報告例はなく,まれな一例と考えられた.今回は症状が軽く良好な経過であったが,腹腔内大量出血の原因となりうるため,子宮筋腫合併妊娠における急激な疼痛の出現の際には,このような病態も念頭に置く必要がある.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 43(3)
271-271, 2006
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