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第112回学術集会(平成18年10月29日(日))
【一般演題】
妊娠分娩4 同種免疫性新生血小板減少症の次子妊娠例について
丸山 康世, 石川 浩史, 永田 智子, 長瀬 寛美, 鈴木 理絵, 山中 美智子
神奈川県立こども医療センター産婦人科
同種免疫性新生児血小板減少症(NAIT)とは,ヒト血小板特異抗原(HPA)の母児間不適合により生じる血小板減少症である.抗血小板IgG同種抗体が,胎盤を経由し胎児に移行し,胎児期から新生児期に血小板減少をきたす.初回妊娠時から児に発症する可能性もある. 症例は27歳1経妊1経産.前児出生時,児に出血斑が認められ,血小板7,000/μlであった.NAITを疑われ精査の結果,父,児ともHPA-4b(+),母HPA-4b(−),母の抗HPA-4b抗体陽性であり確定診断に至った.今回,妊娠管理目的に当院産科に紹介された.胎児にNAITの可能性があることを説明し,胎児診断の目的で胎児臍帯血穿刺を提案したが同意を得られなかった.NAIT発症の場合の出生時の頭蓋内出血回避のため,予定帝切を施行した.出生児の血小板は25.6×103,臍帯血24.6×103であり,NAITの可能性は否定的であった. NAITは第1子の出生後に診断されることが多く,初回妊娠時にNAIT発症を予見することは現状では不可能である.妊娠初期の母体血清中の抗HPA抗体によるスクリーニングや,出生児のスクリーニングを推奨する説もあるが,一般的ではない. NAIT発症例では次回妊娠時に再発の可能性が高い.父母のHPAタイピング等の精査を行い,その上で充分なカウンセリングが必要である.次回妊娠時には重症化をきたすことがあり,厳重な周産期管理が求められる.臨床的には胎児臍帯穿刺の適応,母体への大量免疫グロブリン,副腎皮質ステロイドの投与の適応が問題となる.また分娩方針の決定や,新生児への血小板輸血のための準備などが必要となる.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 43(3)
272-272, 2006
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