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第112回学術集会(平成18年10月29日(日))
【一般演題】
妊娠分娩5 家族性大腸ポリポーシスに対する回腸嚢肛門吻合術施行後に経腟分娩した1例
小笠原 英理子, 大森 真紀子, 島 崇, 小室 真祐子, 須波 玲, 奥田 靖彦, 端 晶彦, 平田 修司, 星 和彦
山梨大学産婦人科
近年,家族性大腸ポリポーシス(FAP)に対する外科治療として回腸嚢肛門吻合術(IPAA)が広く施行されてきている.IPAA施行後に妊娠,分娩に至る症例も増加しているが,我が国においては報告が少なく,IPAA施行後の分娩様式について,いまだ一定の見解はない.今回,FAPに対しIPAA施行後に妊娠し,経腟分娩した1例を経験したので報告する.症例は34歳の初産婦,20歳時にFAPに対しIPAAを施行された.平成15年10月より当科不妊外来にて不妊治療を開始し,凍結胚移植にて妊娠が成立した.妊娠28週,切迫早産の診断にて入院となり,塩酸リトドリンの持続点滴を開始した.妊娠成立後,排便回数は1日に6〜7回と非妊時に比し1回程度増加していたが,漏便はみられず,また,妊娠経過中に腸閉塞の徴候は認められなかった.IPAA施行後であることより分娩様式を検討した.文献的に,過去にはIPAA後の適応のみで帝王切開を選択する場合が多かったが,近年の報告ではIPAA後であっても経腟分娩は安全であり,長期的に肛門機能の悪化を来す事はないとする報告も増えている.帝王切開後に腸閉塞を発症する危険性も考慮し,本人,夫からインフォームドコンセントを得た上で,経腟分娩を選択する方針となった.陣痛発来を待機していたところ,妊娠38週,陣痛発来し正常経腟分娩となった.児は2628gの男児で,Apgar scoreは1分後9点,5分後10点であった.肛門側への裂傷を回避するため左側会陰切開を施行した.出血量は515ml,分娩所要時間4時間46分であった.分娩後は排便回数の増加,漏便の出現はなく,分娩後3ヵ月現在も肛門機能の悪化はなく経過している.IPAA後の分娩取り扱いにつき文献的考察を交えて報告する.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 43(3)
275-275, 2006
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