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第112回学術集会(平成18年10月29日(日))
【一般演題】
妊娠分娩5 汎血球減少を契機に発見された急性前骨髄球性白血病合併妊娠の1例
後藤 優美子, 内田 能安, 三塚 加奈子, 東郷 敦子, 飯田 哲士, 新井 正, 杉 俊隆, 森 晃, 三上 幹男
東海大学専門診療学系産婦人科
【はじめに】急性前骨髄球性白血病(APL)は急性骨髄性白血病全体の15〜20%を占め,早期にDICを併発しやすく,妊娠中に発症した場合は母体の予後は極めて不良であるといわれていた.しかし近年ATRA(All-Trans Retinoic Acid)療法の導入によりその予後は改善してきている.今回我々は妊娠後期に汎血球減少で発見されたAPLの1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.【症例】31歳,2経妊1経産.妊娠28週より白血球減少を認めていた.妊娠36週6日に汎血球減少により入院管理目的に当院転院となった.入院時WBC1000/μl,Hb9.4g/dl,Plt68000/μlの汎血球減少を認め,骨髄穿刺施行し前骨髄球31.8%,Auer body(+),Faggot cell(+),また染色体検査では48,XX,t(15;17)(q22;21),+21,mar2の異常を認めAPLと診断された.妊娠37週3日に十分なインフォームド・コンセントを行った上でATRA療法を開始とした.既往としてRhD(−)があり,またDIC傾向を呈していたことから,輸血製剤を確保し,妊娠37週6日に経膣分娩とした.児は2795g女児,Apger score 1分値8点・5分値9点であり,明らかな異常所見を認めず,母体はATRA療法継続中である.【結語】妊娠中のAPL合併に対するATRA療法において,胎児および新生児に奇形等の障害が発生した事例はなく,十分なるインフォームド・コンセントのもとで使用可能とされており,特に妊娠中期以降であれば母児共に予後が期待できると考えられる.一般的に妊娠中に精査目的で骨髄穿刺を施行することはまれであるが,血液疾患の合併も十分に考慮した上で状況に応じて積極的に行っていく必要があると考えられた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 43(3)
276-276, 2006
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