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第112回学術集会(平成18年10月29日(日))
【一般演題】
妊娠分娩6 妊娠34週に発症した激症型糖尿病のため胎児仮死を呈した一例
武藤 聡子, 落合 尚美, 中村 泰昭, 川村 久恵, 中川 圭介, 上里 忠和, 五十嵐 敏雄, 梁 善光
帝京大学ちば総合医療センター産婦人科
【緒言】妊娠は糖尿病発症の一つの契機となることは知られているが,妊娠中期までに発症することが多く症状の発現も緩徐なことが多い.今回我々は妊娠34週に突然糖尿病を発症し,急速なケトアシドーシスの為,胎児仮死を生じた一例を経験したので報告する.【症例】26歳,2経妊0経産.実父が糖尿病の家族歴を有する.既往歴として梅毒感染歴,C型肝炎キャリアー,ネフローゼ症候群(微小変化群:プレドニン12.5mg/day内服)がある.妊娠33週までは暴飲暴食傾向による著明な体重増加(20kg増)を認めたが高血圧,蛋白尿,尿糖など認めず経過していた.妊娠31週時のHbA1cおよび血糖値はそれぞれ5.8%,83mg/dlであった.しかしながら妊娠34週の妊婦健診で尿糖強陽性を示し翌日精査目的にて入院.入院時血圧130/80mmHg,意識清明で自覚症状は殆どなし.尿蛋白は陰性,尿糖強陽性,尿中ケトン体強陽性,血糖563mg/dl.また動脈血ガス分析で代謝性アシドーシスを認め糖尿病性ケトアシドーシスと診断された.一方児の状態は入院時のNSTでnon reassuaring fetal statusと診断された為,胎児仮死の診断にて緊急帝王切開施行となった.児は2180g,Aps7/8(1’/5’)であり低血糖や奇形などは認められなかった.術後よりインスリン療法施行を開始し内科管理となった.本症例では抗GAD抗体は陰性であった.【考察】妊娠中の糖尿病性ケトアシドーシスは,胎児死亡が約30%の頻度で生じるのみならず母体死亡をも引き起こす重篤な産科合併症の一つである.今回急激な高血糖に伴う子宮内環境の悪化が胎児仮死を招来したと推測される.本症の発症の病態について若干の文献的考察を加え報告する.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 43(3)
277-277, 2006
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