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第112回学術集会(平成18年10月29日(日))

【一般演題】
妊娠分娩6
前置胎盤・前置癒着胎盤における帝切時出血の検討と対策


長谷川 ゆり, 川上 裕一, 高橋 宏典, 吉田 昌史, 芝崎 智子, 松田 秀雄, 古谷 健一
防衛医科大学校産婦人科


 【目的】前置胎盤・前置癒着胎盤は多量の出血を伴うことがあり,分娩に際しては周到な準備と迅速な対応が求められる.今回我々は,当院で経験した前置胎盤の症例を後方視的に検討し,前置胎盤の診断・管理について考察した.【方法】2000年1月〜2006年5月に当院で経験した3599分娩を対象とした.前置胎盤症例は64例(1.8%)あり,ITP合併の1例を除いた63症例で,妊娠歴,出血量,輸血,前置癒着胎盤,子宮摘出などの項目について検討した.【成績】分娩週数35±2週,出生体重2351±621g(mean±SD),前置癒着胎盤にて子宮摘出した症例は4例(6.3%)だった.3例(4.8%)は前置癒着胎盤を強く疑い胎盤を剥離せずUAEを施行した.平均出血量(羊水を含む)は,前置胎盤全体では1770±1731g(mean±SD),前置癒着胎盤例を除いた群では1382±860g,前置癒着胎盤群では4873±3396gであった.当院での他の帝王切開例の平均出血量886±575gと比較して有意に出血量が多かった.癒着胎盤がない例の89.3%は輸血なし,または自己血輸血で対応できたが,前置癒着胎盤の輸血量は4873±1960ml(mean±SEM)であり,そのうちUAEを施行した群の輸血量は2520±1069mlであった.子宮手術の既往を有する症例は22例(帝切12例・子宮内掻爬14例)であり35%であった.【結論】前置胎盤の約9割は自己血のみで対応可能または輸血不要であった.前置癒着胎盤の術前確定診断は難しいが,実際に前置癒着胎盤であれば大量の輸血が必要となるため,十分な輸血量を確保しておく必要がある.子宮手術の既往,超音波・MRI検査などから癒着胎盤を強く疑う場合は,胎盤を剥離せずUAEを行うことで出血量及び輸血量を減らすことができる可能性がある.


日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 43(3) 278-278, 2006


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