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第112回学術集会(平成18年10月29日(日))

【一般演題】
妊娠分娩7
妊婦健診中無症候で経過した子癇発作の1例


三枝 美智子, 有馬 香織, 福田 雄介, 谷口 智子, 大路 斐子, 宮岸 玲子, 平野 孝幸, 前田 光士
東京都保健医療公社荏原病院産婦人科


 子癇とは妊娠高血圧症の諸症状を有する妊婦または褥婦が痙攣または意識喪失を来たした状態で,他の脳の器質的疾患との因果関係が否定されたものをいう.しかし子癇発作症例の2割は妊娠高血圧症が軽度であるか,あるいは全く指摘されていない症例であるとも言われている.今回我々は妊婦健診中異常なく経過していたが,妊娠40週で突然の子癇発作を発症し緊急帝王切開になった症例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.症例は28歳の初産婦.他院にて妊婦健診をし妊娠33週分娩目的にて当院受診となった.妊娠40週1日まで血圧正常,尿蛋白(−),分娩監視モニターいずれも異常なく経過していた.妊娠40週5日,2日間続く胃痛,頭痛,吐き気のため救急外来受診した.HELLP症候群を疑ったが,血圧128/72mmHg,出血傾向や肝機能異常を認めず,内診上分娩も進行していない事から一時帰宅とした.5時間後,症状が全く軽快しないため再度救急外来受診.疼痛時血圧190/100mmHgと上昇認め,妊娠高血圧症も念頭におき入院管理とした.入院6時間後突然の子癇発作を発症したため急遂分娩の必要性を家族に説明した後,緊急帝王切開となり2815g,Apgar score 8/9の女児を娩出した.術後2時間後に再度子癇発作発症しICU管理となった.頭部MRIでは後頭葉,基底核に限局性血管性浮腫を認め,脳波でもθ波出現の異常が認められた.血圧管理,抗痙攣剤,脳浮腫改善薬を厳重に行い,MRI・脳波は正常に戻り術後17日目に退院となった.退院後は軽度高血圧を認めるものの,内服治療せず経過観察中である.


日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 43(3) 280-280, 2006


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