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第112回学術集会(平成18年10月29日(日))
【一般演題】
良性腫瘍その他 子宮に発生したミューラー管由来嚢腫の一例
阿美 寛人, 平川 隆史, 村田 知美, 青木 宏, 中村 和人, 鹿沼 達哉, 峯岸 敬
群馬大学産婦人科
子宮に発生する嚢胞性疾患は稀であり,文献的には嚢胞性子宮腺筋症の報告が散見される程度である.今回我々は子宮頸部に多発嚢胞として発生し,組織学的に多彩な像を呈したことからミューラー管由来嚢胞と診断した稀有な一例を経験したので報告する.症例は49歳女性,4経妊4経産.平成18年3月,下腹部痛を主訴に前医受診.超音波断層検査にて骨盤内に多房性腫瘤が認められ,卵巣腫瘍疑われたため当科紹介となった.初診時,内診にて子宮左側に超小児頭大の弾性硬腫瘤を触知した.経腟超音波検査で12cm大の嚢胞性腫瘤を認め,嚢胞壁の一部に肥厚を認めた.MRIでは子宮左側に嚢胞性病変を認め,嚢胞の内部はT1強調画像で高信号,T2強調画像で低信号を呈した.肥厚した嚢胞壁に明らかな造影効果は観察されなかった.腫瘍マーカーはCA19-9 462U/ml,CA125 67U/mlと上昇していた.術前診断を子宮内膜症性卵巣嚢腫として開腹.両側付属器に異常所見は認められず,子宮左側の新生児頭大の嚢胞性腫瘤が子宮頸部から発生していることが確認されたため,単純子宮全摘術を施行した.病理組織検査では,子宮筋層類似の平滑筋繊維の中に多発嚢胞を認め,嚢胞内面は頸管腺円柱上皮類似の粘液円柱上皮,卵管上皮類似の腺毛円柱上皮,子宮内膜上皮で覆われていた.いずれの上皮成分からも悪性所見は認められなかった.これら上皮の形態から本症例をミューラー管由来の過誤腫と診断した.術後経過に大きな異常を認めず,術後9日目に退院,現在外来で経過観察中である.膣発生のミューラー管由来嚢腫の報告は散見されるが,子宮頸部からの発生の報告は極めて稀である.本症例について若干の文献的考察を加えて報告する.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 43(3)
301-301, 2006
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