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第112回学術集会(平成18年10月29日(日))
【一般演題】
感染症1 悪性腫瘍が疑われた放線菌症の2例
冨尾 賢介, 足立 克之, 川名 敬, 三浦 紫保, 中村 久基, 有本 貴英, 根井 朝美, 高田 恭臣, 中川 俊介, 八杉 利治, 矢野 哲, 武谷 雄二
東京大学産婦人科
【緒言】骨盤内に発症する放線菌症は,IUD長期使用者の合併症として以前より報告があるが,放線菌症の腫瘤は悪性腫瘍との鑑別に苦慮することがある.初診時悪性腫瘍を疑われたが,保存的治療により良好な経過をたどった放線菌症の2例を報告する.【症例】1:43歳4経妊4経産.主訴は下腹部痛と発熱,下腹部腫瘤.画像上,子宮と一塊になった左付属器領域の¢8cmの腫瘤を認め,卵巣悪性腫瘍疑いで入院.入院時WBC13900,CRP6.2,腫瘍マーカーは陰性.子宮頚部・内膜細胞診にて放線菌を検出.6年前挿入のIUDを抜去し,放線菌症に対し抗生剤ABPCの点滴投与開始.腫瘤は縮小,炎症所見も改善し退院.約半年間ABPC内服継続し軽快した.2:54歳3経妊3経産.主訴は下腹部痛と便柱狭窄,発熱.16年間挿入したままのIUDを抜去も症状軽快せず来院.子宮,卵管内に¢5cmの腫瘤を形成,左尿管狭窄を来たし水腎症も認めた.入院時,WBC20400,CRP15.43,腫瘍マーカーは軽度上昇.子宮悪性腫瘍による子宮留膿腫も疑われたが,子宮頚部・内膜細胞診にて放線菌が検出されABPCの点滴投与開始.腫瘤は縮小,炎症所見も改善し退院.約半年間ABPC内服継続の方針とした.【結語】放線菌症は下腹部痛,発熱,体重減少で発症,内診では癌性病変様の浸潤性の骨盤内硬結を伴うことが多い.そのため悪性腫瘍の診断で開腹され,初めて放線菌症と診断される症例も多数報告がある.我々の経験した2症例では子宮頚部・内膜細胞診が初期診断に有効であった.強い炎症所見を伴う骨盤内腫瘤を認めた場合,問診を丁寧に聴取し放線菌症を念頭におくべきである.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 43(3)
331-331, 2006
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