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第112回学術集会(平成18年10月29日(日))

【一般演題】
感染症1
臨床所見より診断しえた骨盤内放線菌症の一例


高田 全1), 青木 宏明1), 杉本 公平1), 窪田 尚弘1), 田中 忠夫2)
富士市立中央病院産婦人科1), 東京慈恵会医科大学産婦人科2)


 放線菌症は慢性化膿性肉芽腫性疾患であり,まれに骨盤内への感染を認めることがある.内性器への感染は子宮内避妊器具(IUD)の長期装着との関連性が指摘されているが,その診断には苦慮することが多い.今回我々は臨床所見より放線菌症を疑い,速やかに治療を開始することができた症例を経験したので報告する.症例は62歳,53歳閉経,1経妊1経産.下腹部腫瘤感,疼痛,便秘,食欲不振にて近医に入院.悪性疾患を疑われ,腸管を精査するも原因を特定できず当院へ紹介となった.内診所見では子宮に連続して頭側に腫瘤を認めた.臨床所見より放線菌症の可能性を考え,問診したところ,15年以上前にIUDを装着しその後放置していたことが判明した.IUDを抜去し,当院入院にて抗生剤による治療を開始した.治療開始後速やかに炎症所見は改善し,症状も軽快したため,入院12日目に退院とすることができた.IUD抜去時の子宮内腔の細胞診により,放線菌を確認した.退院後も下腹部腫瘤を触知するため,抗生剤の内服治療を続けた.放線菌症による腫瘤は診断がつかずに手術を施行し,病理組織学的に初めて診断されることも多い.子宮内避妊器具長期装着者が付属器炎の症状を認める場合,特に付属器周囲に腫瘤を認める場合には,放線菌症の可能性を念頭におくことが必要だと考えられた.また子宮内避妊器具は定期的に交換し,装着中は細胞診や培養同定検査などを行い,感染の有無を確認することが望ましいと思われる.


日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 43(3) 331-331, 2006


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