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第112回学術集会(平成18年10月29日(日))
【一般演題】
感染症2 帝王切開後に壊死性筋膜炎をきたした一例
高橋 吾郎1), 大内 望1), 阿部 崇1), 西 弥生1), 峯 克也1), 品川 寿弥1), 澤 倫太郎1), 磯崎 太一1), 明楽 重夫1), 竹下 俊行1), 渡辺 昇一2)
日本医科大学産婦人科1), 社会福祉法人勝楽堂病院産婦人科2)
帝王切開後に壊死性筋膜炎を発症した一例を経験した.壊死性筋膜炎は死亡率も高く本邦においては帝王切開後の発症例は稀有である.症例は妊娠41週0日,妊娠経過中に異常なし.前期破水にて入院し陣痛発来後,分娩停止となり前医にて緊急帝王切開施行.術前より抗生剤点滴が行われ,手術所見においても強い感染は疑われなかった.術後より38―39度の発熱が続き,術後3日目にいたっても解熱傾向なく子宮内感染を疑われ前医より搬送.嫌気性菌やMRSA感染を起因とする骨盤内,子宮内及び筋層の感染を疑いCLDM1200mgとFMOX2.0gで保存的治療開始するが解熱傾向なく,また下腹部正中やや左側に圧痛を認めた.CTおよび薬物治療の効果判定の目的でMRIを施行したところ皮下及び膀胱子宮窩〜筋層に膿を疑うクローズドスペースがみられ,抗生剤による保存治療では困難と判断して皮下膿瘍,骨盤内膿瘍の診断にて骨盤内ドレナージ,創部デブリドメントを施行した.再手術後の創部痛は強く,2日目には皮膚は発赤し浮腫状に腫脹,強い圧痛がみられた.この際,起因菌として嫌気性のPrevotella biviaが同定され,臨床所見から壊死性筋膜炎を疑い,創部全開放のうえ抗生剤をMEPM,CLDMに変更.γグロブリンを投与し,高圧酸素療法および創部温生食洗浄を開始した.高圧酸素療法開始翌日より創縁から拡大した発赤,有痛性皮下硬結が縮小しはじめ急速に血液検査上の炎症性変化は軽減,症状も解熱,疼痛の軽減が見られ創部全開放後(高圧酸素療法開始後)の第4病日には解熱鎮痛剤の使用もなく顕著な軽快を見た.壊死性筋膜炎を発症したものの最小限のデブリドメントにて救命し,子宮温存を得たと考えられた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 43(3)
334-334, 2006
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