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第112回学術集会(平成18年10月29日(日))
【一般演題】
胎児新生児異常3 胎内自然縮小を認めた腹水を伴った先天性嚢胞状腺腫様肺奇形の1例
今井 幸, 田中 利隆, 薪田 も恵, 米本 寿志, 伊藤 茂, 武内 裕之
順天堂大学医学部産婦人科
先天性嚢胞状腺腫様肺奇形congenital cystic adenomatoid malformation of lung(CCAM)は子宮内でしばしば自然縮小傾向を示す.しかしこれらはほとんどが胎児水腫を伴っていない場合であり,胎児水腫を合併した場合には,児が救命されることはまれであり,胎児手術の適応とも考えられている.今回,超音波検査とMRIにより胎児腹水と軽度の皮下浮腫を伴ったCCAMと診断,予後不良と考えられたが自然縮小し予後良好であった症例を経験したので報告する.症例は34歳,1経妊0経産,自然妊娠成立後,他院で経過観察.28週,胎児腹水と羊水過多,またそれに伴う切迫早産徴候認たため,29週当院母体搬送となった.超音波精査上著明な腹水の貯留と頭頚部の浮腫,また心臓の左軸偏移と右胸腔内に高輝度の小嚢胞状腫瘤性病変を認めた.ウイルス検査,羊水染色体検査は異常なし,胎児MRI上右胸腔内の大部分を占める腫瘤性病変認め,超音波検査と合わせて胎児CCAM(microcystic form)の診断となった.患者より胎児治療は希望がなかったため,定期的な超音波検査により経過観察とした.腹水の性状を調べるため29週胎児腹水穿刺を施行,その後腹水の再貯留はなく,胎児水腫・羊水過多も改善,超音波・MRI上腫瘤の自然縮小を認めた.38週0日,予定帝王切開術にて3034gの男児を出産した.出生後CT施行CCAMの診断にて,日齢2に右上中葉切除術施行した.術後経過良好で現在に至っている.今回軽度とはいえ胎児水腫を合併していたにもかかわらず予後良好であった症例を経験した.今後の胎児治療の適応について文献報告をふくめ考察する.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 43(3)
343-343, 2006
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