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第114回学術集会(平成19年10月14日(日))
【シンポジウムI】
2.神奈川県の周産期救急システムの現状と問題点
奥田 美加
横浜市立大学附属市民総合医療センター総合周産期母子医療センター
神奈川県は,ホームページによると面積約2,400平方キロメートル,狭い方から数えると全国6番目である.ここに人口約888万人が住み,人口密度は1平方キロメートルあたり約3,700人,年間出生数は80,000人弱である.政令指定都市である横浜市,川崎市の他,大きな市町村をいくつも擁する. 神奈川県の周産期救急システムは,県内を6つのブロックに分け,それぞれに基幹病院(横浜ブロックのみ3施設)が設置されている.ブロック内で発生した産科救急は,各ブロックの基幹病院へ受け入れ要請がなされる.基幹病院が満床などの理由で受け入れられない場合には,2007年3月までは,基幹病院が他施設へ電話連絡をして受け入れ先を探すシステムであった.しかし神奈川県は慢性的なNICU不足の状態で,産科救急の実に一割が他県に搬送されている.つまり県内の協力病院に受け入れ先が見つからないこともしばしばあり,時間的余裕のある症例ならば東京都内や千葉県ほか近隣の他県へ延々と電話をかけ続けることとなる.当センターでも深夜5時間にわたり担当医が労力を費やすケースがあった.その挙げ句に結局どこも見つからず,状態が安定していれば発生元で今しばらくの管理をお願いしたり,満床でもやむを得ず受け入れて分娩後に新生児搬送したりと,ぎりぎりのやりくりがなされている. いざ送ろうとしてもすぐには搬送先が見つからない現状から,発生元は早め早めの搬送転院を要請するようになり,基幹病院の母体満床を招き,受け入れが更に難しくなるという悪循環に陥っている. 一方,最近では,状態の安定しているDD双胎や,妊婦健診未受診妊婦の分娩など,従来は三次施設以外が引き受けていた中等度のリスク症例の受け入れ先が減り,基幹病院に集中し,業務量が著しく増えている. こうした時代背景において,基幹病院の負担を軽減すべく,県と医師会で運営されている神奈川県救急医療中央情報センターが基幹病院に代わって受け入れ先を探すシステムが発足し,2007年4月より本格的に稼働し始めた.この新方式の運営状況について報告し,神奈川県における周産期救急の現状と問題点,これからの展望について考える.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 44(3)
251-251, 2007
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