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第114回学術集会(平成19年10月14日(日))

【シンポジウムI】
3.北関東地区(特に栃木県)における母体搬送の現状


渡辺 博
獨協医科大学病院総合周産期母子医療センター


 栃木県では1996年9月に自治医科大学付属病院に,1997年1月に獨協医科大学病院にそれぞれ総合周産期母子医療センターが設置された.厚生省(当時)は各県1施設を目標としていたが,構想が先行していた栃木県は,独自に両大学をセンターに認定したため,人口100万人に1カ所の総合周産期母子医療センターが設置されることになった.当時栃木県は各県1施設という国の基準を遵守するため,両大学のMFICUに依頼施設からのホットラインとなる電話機を設置して,1ヶ月交替で受付を担当するシステムを構築した.10年過ぎた現在も電話機は栃木県の総合周産期母子医療センターの象徴として病棟に存在している.新たな施設を作ることなく,全国の大学病院として有数の分娩数をもつ両大学に周産期センターを委嘱した,当時の栃木県関係者の先見の明は称えられるべきであろう.センター設立当初は母体搬送・新生児搬送とも,両センターでほぼ100%受け入れることができていたが,受入率は年々低下して,昨年は65-70%と,センター設立前の水準に戻ってしまった.ただし,1996年以前は他県からの受入はほぼ断りつつ,受入不能の母子は他都県にお願いしていたが,現在はむしろ他都県からの搬送依頼を受け入れつつも,多くはお断りしていることが,受入率の低下の一因となっている.獨協医科大学病院総合周産期母子医療センター発足時から2006年までの10年間の母体搬送受入数は1,540名,うち栃木県の医療機関からの搬送は1,303名(84.6%)茨城県138名(9.0%)群馬県57名(3.7%)埼玉県40名(2.6%)福島県2名(0.1%)であった.
 北関東地区では現在茨城県に3カ所(筑波大学付属病院,水戸済生会病院,土浦協同病院),群馬県に1カ所(群馬県立小児医療センター)に総合周産期母子医療センターが設置されているが,お互いのネットワークシステムは存在しない.隣接県との母体搬送の現状について,2003年に獨協医大で行ったアンケート調査(第27回栃木県周産期医療研修会で発表),2006年4月から6月に茨城県で行われた母体搬送実数調査(平成18年度日本産婦人科医会関東ブロック協議会で水戸済生会総合病院山田直樹先生が公表),2006年8月から11月に行われた栃木県の母体搬送・新生児搬送の実数調査(第40回栃木県周産期医療研修会で自治医科大学小児科高橋尚人先生が発表)のデータをみると,他県から栃木県への搬送数の方が,栃木県からの搬送数を上回っていることが伺われる.栃木県でも産科医療施設の減少が進行しており,ここ1-2年で産科診療を休止ないしは縮小した病院が6施設(全14施設中)にのぼる.診療所は6施設が産科を中止したが,新たに6施設が分娩取り扱いを開始した.二次施設の機能が縮小した結果,一次施設から直接三次の周産期センターへ搬送される機会が増加しており,両センターとも対応に苦慮しているのが現状である.


日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 44(3) 252-252, 2007


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