|
<< 学会誌へ戻る
<< 前のページへ戻る
第114回学術集会(平成19年10月14日(日))
【シンポジウムI】
4.小児科医の立場から
中村 友彦1), 宮下 進1), 菊池 昭彦2)
長野県立こども病院総合周産期母子医療センター新生児科1), 同産科2)
長野県は,全国で四番目に広い県で,出生数が約2万人,総合周産期母子医療センター一カ所と地域周産期センター五カ所で,長野県周産期医療をシステム化している.長野県立こども病院総合周産期母子医療センターは,産科24床(MFICU 6床),新生児病棟39床(NICU18床)である.新生児病棟の年間入院数は約260人,院内出生,院外からの新生児搬送による入院がそれぞれ約半数である.産科分娩数は年間約200,母体搬送が65%である.こども病院に併設された総合周産期母子医療センターなので,母体搬送は多くが早産管理である.その中で今回は,多胎妊娠の母体搬送を巡る現状と課題について小児科サイドより検討した. 1.長野県における多胎妊娠分娩の現状 長野県の分娩取り扱い施設における2006年多胎妊娠分娩の現状についてアンケート調査をおこなった.42施設16,231分娩において双胎187例,品胎6例で,初期膜性診断は9割でおこなわれていた.母体搬送は36件で搬送先はすべて総合または地域周産期センターであり,搬送時期は膜性診断された時点での紹介が3割,切迫早産徴候が出現してからの紹介が3割で,残りが妊娠時期を決めての紹介であった.緊急搬送で収容先が見つからないとの事例はなかった. 2.長野県立こども病院新生児病棟における多胎児入院の推移 この5年間,入院児の15-20%が多胎で,双胎が15-23組,品胎が2-4組で多胎入院の増加はないが,双胎・品胎ともに出生体重は減少,出生週は早くなる傾向にある.病床の平均21.1%が多胎児であった.多胎入院直後にNICU病床定数オーバーすることが度々あった. 3.地域中核小児科病院と連携したNICU後方支援地域ネットワーク・信州モデル 長野県立こども病院新生児病棟に入院した児の転帰は,直接退院47%,地域病院で転院39%,院内で他病棟(他科)に転棟10%,死亡4%である.極低出生体重児に関しては95%が地域病院へ転院し,地域で長野県の事業である極低出生体重児フォローアップ事業に乗ってフォローされている.半年以上の入院児は年間平均6名で2/3が極低出生体重児,1/3が低酸素虚血性脳症と奇形症候群である.1年以上の入院児は年間平均1.2名(病床の約3%),ほとんどが低酸素虚血性脳症である. 結語 母体高齢化,不妊治療,少子化という時代の流れのなかで,両親,産科の要望に応えて多胎児を受け入れていくことは総合周産期母子医療センターNICUとしての使命である.そのためには分娩施設との連携による多胎児登録システムによる適切な母体情報の把握と,長期医療,療育の必要な児を在宅,地域で継続医療してもらうための,地域中核小児科病院と連携したNICU後方支援地域ネットワークが必要である.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 44(3)
253-253, 2007
|