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第114回学術集会(平成19年10月14日(日))
【シンポジウムII】
2.再発子宮内膜癌の治療戦略
高野 忠夫
東北大学病院産婦人科
・はじめに 一般的に子宮内膜癌は早期に診断されるため,比較的予後の良好な疾患とみなされる.診断時にIV期の症例はわずか5%である.しかし一旦,再発・転移(好発部位は,腟断端,骨盤内,腹腔内,傍大動脈リンパ節,肺)すると予後は著しく不良であり,GOG試験でのmedian survivalはおよそ1年以下である.このように,15%以上の患者が子宮内膜癌により死亡しているのが現実である. ・治療かpalliative(QOL)か 再発子宮内膜癌症例は,肥満,高血圧,糖尿病などの多くの内科的疾患を合併しているのみならず,高齢者が多く,全身化学療法,骨盤腔の放射線療法の既往がある場合も多い.したがって,まず初めに治療の毒性を上回る治療効果と生命予後の改善が期待できるかどうか症例に応じた十分な検討が重要である. ・再発子宮内膜癌に対しての治療方針 さて,再発子宮内膜癌の治療法については様々な疑問が上げられる. 今回は,以下の疑問について考えてみたい. 手術療法:再発子宮内膜癌患者に対して,どのような場合に手術療法が有効であるのか?放射線療法:再発子宮内膜癌患者に対して,どのような場合にsalvage radiation therapyが有効であるのか? CCRT:子宮頸癌では,CCRTが治療成績向上に寄与することが分かってきた(NCI Announcement,1999).再発子宮内膜癌患者に対して,CCRTは有効であるのか? ホルモン療法:子宮内膜癌の発癌にはestrogenが関与しており,progesteroneには体癌に対する抗腫瘍効果が認められる.日本では補助療法として,あるいは姑息的効果を期待して投与されることが多いが,NCCNガイドラインではprogesterone療法が再発子宮内膜癌に対する第一選択として位置づけられている. 再発子宮内膜癌患者に対して,ホルモン療法は試されるべきか? 化学療法:再発子宮内膜癌の化学療法には明確な指針はなく,様々な薬剤(単剤,併用)の奏効率を参考にして行われている.現在,欧米ではdoxorubicin+cisplatin(AP)療法が進行・再発子宮内膜癌に対して用いられる標準的なregimenと考えられている. GOG studyにより,子宮内膜癌の術後療法として化学療法の放射線療法に対する優位性と(GOG122),paclitaxelのAP療法に対する上乗せ効果が示された(GOG177). 再発子宮内膜癌患者に対して,Paclitaxel/doxorubicin/Cisplatin(TAP)療法は標準治療であるのか? 最近,日本では標準療法であるAP療法に対し,Taxane/Platinum療法の子宮内膜癌への適応例が増加している. 再発子宮内膜癌患者に対して,今後Taxane/Platinum療法は標準療法と成り得るのか? 今後の方向性:今後,再発子宮内膜癌治療はどのような方向に向かっていくのか?
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 44(3)
255-255, 2007
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