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第114回学術集会(平成19年10月14日(日))

【シンポジウムIII】
4.子宮腺筋症に対するダナゾール局所療法


五十嵐 茂雄
群馬大学産科婦人科


 子宮腺筋症は良性疾患ではあるが,その根治は子宮全摘しかない.
 最近,オーダーメイド医療がうたわれており,子宮腺筋症も,患者の状況や希望に合わせた,最新・最善の治療法の判断が必要となる.治療法は,保険適応のあるものからないものまですべてにおいて,めまぐるしい変化・進歩がみられ,正確な情報を提供できないことも多い.インフォームドコンセントが,十分な予後やリスク等の説明であるとともに,治療法の選択肢の十分な説明も含まれるべきとされる現在,今回のような学会,医学雑誌で最新の正確な情報を得ていきたいものである.
 そんな中,我々は以前より,ダナゾールを徐放性とした腟リングおよびIUDの有効性に関して,エビデンスを含め報告を行ってきた.当然,腺筋症の治療法の一つとして臨床家の皆様には認識しておいてほしいことであり,正確な情報を再び提供したいと思う.
 我々はダナゾールの局所作用の有効性と,局所投与の為のDDS(ドラッグデリバリーシステム)として腟リングやIUDを組み合わせることで,子宮内膜症関連疾患で良好な成績を上げてきた.局所投与なので,全身的副作用は皆無であるが,その効果は,DDSの関係上,リングやIUDに接した部位に絞られる.今回は子宮腺筋症に焦点を絞り,その詳細について報告する.
 基本的に避妊IUDの「FD-1」にダナゾール徐放性のシリコンをまとわせたダナゾール含有IUDを用いる.その効果は,残念ながら客観的評価となる腺筋症の病変体積の減少に有意差は出ない.しかし,臨床症状,ことに月経困難症,性行痛,慢性骨盤痛に対する効果は明白である.そして,次に明らかなのが,過多月経の軽減である.これも,腺筋症の代表的症状であり,患者のQOLを上げる.
 一方,問題点は,第1に腺筋症が一般的に子宮の増大,内腔の増大を伴っており,IUDが過多月経に流され,自然に滑脱してきてしまう症例があることである.しかし改良により減少しており,さらに形状,作成法等の改善を考えている.第2にIUDを挿入する際の痛みの対策である.元々痛みのある患者に,衣をまとったIUDを初回に挿入する際の痛みは,局麻,静麻が必要とされる症例も少なくない.しかしこれは,入れ替えなどの2回目以降にはIUDの効果により解消していることも多い.そしてIUDとしての問題,副作用は残る.(避妊具としての効果の検証は行っていない)
 上記のような説明を治療の一選択肢として患者にご紹介いただければ幸いであるが,現在日本で同等の治療具は見あたらず,見通しもない.希望者には遠路通院を求めるか,他の先生方にIUDの使用を依頼するしかない.しかし,最近,米国で,ダナゾール含有リングの臨床試験が開始されたことを知り,近年中に日本にも入ってくる可能性が示されている.日本で広く使用可能となったときにはスムーズに使用していただくことを願うものである.また,本日の話が,今後の他の治療法との組み合わせや,新たな治療法の開発のヒントにもなっていただけると幸いである.


日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 44(3) 261-261, 2007


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