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第114回学術集会(平成19年10月14日(日))
【一般演題】
妊娠・分娩・産褥(1) 筋腫核出と帝王切開既往を有する妊婦が妊娠25週で子宮破裂,出血性ショック,胎児死亡に至った一例
市川 剛, 久野 宗一郎, 友部 淳子, 田村 正明, 宮川 康司, 正岡 直樹, 高田 眞一, 山本 樹生
日本大学産婦人科
腹腔鏡手術の技術向上・普及に伴い今後ますます腹腔鏡下子宮筋腫核出術(LM)が増加することが予想される.しかしLM後の妊娠例では陣痛発来前の子宮破裂例が1%程度で報告されている.今回,LMの5年後に帝王切開術を施行,2回目の妊娠中に子宮破裂を生じた一例を経験した.症例は34歳,平成12年に前医でLMを受け平成17年に妊娠37週4日骨盤位,軟産道強靭の診断で帝王切開を受けている.この時,子宮底部右側の筋層が数mmに菲薄化しており,その部分のみ子宮収縮不良であったため電気メスで漿膜から内腔まで幅3cmの切開を加え,菲薄化した筋層を切除し縫合している.妊娠25週2日に上腹部痛を訴え前医を救急車で受診,児の心拍は認めず,血圧が54/28mmHgと低下,常位胎盤早期剥離の疑いで,当院救命センターに緊急搬送となった.当院にて胎児心拍停止,多量の腹腔内出血を認めたため出血性ショック,子宮破裂の疑いにて母体適応のため試験開腹術を施行した.子宮底部右側が横方向に10cm裂け幸帽児として腹腔内へほぼ脱出しているのが認められ,子宮破裂と診断した.出血は破裂部からではなく,破裂部から脱出している胎盤部より出血していた.幸帽児の状態のまま取り出し,破裂部をデブリード後帝王切開に対する処置と同様に両創縁を結紮後,創部を2層に分けて連続縫合施行した.総出血量は3,212g,輸血量はMAP8単位FFP6単位.術後9日目で退院となった.子宮に単極の電気焼灼術を使用すると子宮創部が壊死を起こし,創傷治癒の遅延と瘢痕部の脆弱化を引き起こし得ることがいわれている.従って今回のようなLM後の帝王切開においてさらに筋腫核出部に操作を加えた場合,より一層の厳重な妊娠管理が必要となる
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 44(3)
265-265, 2007
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