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第114回学術集会(平成19年10月14日(日))
【一般演題】
妊娠・分娩・産褥(1) 海綿状血管腫合併妊娠の3症例
野口 里枝, 小倉 剛, 人見 義郎, 中村 佳子, 小畠 真奈, 濱田 洋実, 吉川 裕之
筑波大学産婦人科
【はじめに】脳脊髄に発生する海綿状血管腫は出血,頭痛,痙攣発作,麻痺などの臨床症状を呈する疾患として知られている.しかしその頻度は低く,妊娠との合併は稀とされている.今回我々は海綿状血管腫合併妊娠の3症例を経験したので文献的考察を加えて報告する.【症例】<症例1>37歳の初産婦,脊髄海綿状血管腫と診断され,内服薬投与にて経過観察されていたところ自然妊娠した.妊娠管理中,母体・胎児とも異常なく経過,妊娠39週6日経腟分娩となった.産褥経過も良好であった.<症例2>27歳の初産婦,4年前右前頭葉海綿状血管腫を切除された.腫瘍の残存を認めたが無症状であったため経過観察されていたところ自然妊娠した.妊娠管理中,異常なく経過したが,残存血管腫からの出血のリスクを考慮し妊娠37週,帝王切開分娩とした.産褥経過は良好であった.<症例3>34歳の初産婦,脳幹部海綿状血管腫が診断され,経過観察していたところ自然妊娠した.妊娠管理中にも左顔面の痺れ,左手の違和感などの症状を訴え,頭部MRIにて血管腫からの出血と診断されたが症状の増悪を認めなかったため経過観察とした.分娩時の再出血のリスクを考慮し妊娠37週,帝王切開分娩とした.産褥経過は良好で再出血もなく退院した.【考察】海綿状血管腫の頻度は低いと考えられていたが近年のMRI検査の増加に伴い診断率が上昇し,潜在的な罹患率は低くないと考えられるようになってきている.妊娠が海綿状血管腫の増悪リスクの一つであるとされ,頭痛や痙攣発作などの症状が妊娠高血圧症候群と似ているため,これらの症状を認めたときは海綿状血管腫も念頭に置くことが必要と思われた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 44(3)
266-266, 2007
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