|
<< 学会誌へ戻る
<< 前のページへ戻る
第114回学術集会(平成19年10月14日(日))
【一般演題】
妊娠・分娩・産褥(2) 脊髄損傷合併の一絨毛膜性双胎妊娠に発症した深部静脈血栓症の1例
丸山 真由子, 田嶋 敦, 菅 直子, 氏平 崇文, 楠木 総司, 阿部 弥生, 永井 富裕子, 田口 雄史, 阿部 礼子, 野島 美知夫, 吉田 幸洋
順天堂産婦人科
脊髄損傷によって下肢に運動障害のある女性が妊娠した場合,妊娠・分娩時に種々の問題が指摘されており,厳重な妊娠分娩管理が必要となる.特に深部静脈血栓症は健常人でも妊娠により増加するが,下肢に運動障害のある脊髄損傷例はよりハイリスクと考えられる.今回我々は脊髄損傷後の一絨毛膜性双胎妊娠に発症した血栓性静脈炎の管理入院中に,子宮内胎児死亡となりその後の精査で深部静脈血栓症が認められた1例を経験したので報告する.症例は23歳,0経妊0経産で,10歳時に外傷により脊髄損傷となり両下肢運動麻痺,Th10以下の感覚障害,膀胱直腸障害が認められ,車椅子生活を送っていた.妊娠10週より一絨毛膜性双胎の診断で当院外来にて管理していた.妊娠11週,左下肢,特に大腿部のむくみが著明となり,炎症反応上昇,凝固もやや高値のため,血栓性静脈炎が疑われ入院管理となった.入院後ヘパリンの持続静注,抗生剤投与を行い,症状,データ共改善を認めた.その後妊娠14週で,2児共心拍確認できず,妊娠15週時に子宮内胎児死亡の診断にて死産分娩とした.死産後の画像評価にて,下大静脈内,腎静脈上までの血栓が認められた.抗リン脂質抗体症候群や膠原病等明らかな凝固異常をきたす病態は認められなかった.血栓の範囲が広く,下大静脈フィルターの適応はない為,ワーファリゼーション行い,退院となった.欧米でも脊髄損傷に深部静脈血栓を合併した報告はまだ少なく,血栓予防のガイドラインなども確立されていない.このような症例はよりハイリスクであり,妊娠・分娩に対する厳重な管理が必要とされているが,妊娠前からの精査も必要であると考えられる.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 44(3)
269-269, 2007
|