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第114回学術集会(平成19年10月14日(日))
【一般演題】
妊娠・分娩・産褥(3) 妊娠を契機に発症した高脂血症による重症急性膵炎の一症例
鈴木 真梨子1), 奥田 靖彦1), 小室 真祐子1), 田中 葉子2), 内田 雄三2), 小川 恵吾2), 端 晶彦1), 平田 修司1), 星 和彦1)
山梨大学産婦人科1), 都留市立病院産婦人科2)
妊娠中の急性膵炎合併頻度は0.03%以下といわれ,母体死亡率は10−20%,胎児死亡率は30%程度とされている.急性膵炎の成因として高脂血症が挙げられるが,妊娠中は正常でも後期に高脂血症を呈することがある.今回,妊娠37週で著しい高脂血症から重症急性膵炎を発症した症例を経験したので報告する.症例は30歳の初産婦で,近医にて妊娠15週に尖圭コンジローマの焼灼術を施行していた.妊娠37週5日,子宮頸部の尖圭コンジローマ再発のため帝王切開の方針となり血液検査を施行したところ,中性脂肪:9325mg/dl,総コレステロール:1480mg/dlと異常高値であった.妊娠38週1日より近医管理入院となったが急激な左背部痛及び嘔吐を認め,血液検査ではWBC:12330/μl,CRP:0.33mg/dl,中性脂肪:8995mg/dl,総コレステロール:1460mg/dl,アミラーゼ:467IU/Lと高値であり急性膵炎の診断で当院へ搬送となった.緊急帝王切開術施行後に造影CTで膵臓の評価を行い,重症度の判定をして加療を行う方針とした.3404gの女児をApgar score 8/9点で娩出した.造影CTの所見はGrade IVであったため急性膵炎の重症度スコアが6点となり重症急性膵炎の診断が確定した.ICUにて二重濾過血漿分離交換法を開始し,輸液管理,蛋白分解酵素阻害剤投与,抗生剤投与を行った.経過順調であり術後5日目より飲水開始となった.術後6日目から流動食を開始し,高脂血症食による食事療法を基本治療として術後15日目に退院した.内科にて高脂血症の原因はLPL欠損症が疑われ,現在外来管理中である.重症急性膵炎は妊娠を契機に高脂血症となり発症することがある.発症後は早期に重症度判定を行い,専門的治療を施行することが重要である.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 44(3)
270-270, 2007
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