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第114回学術集会(平成19年10月14日(日))
【一般演題】
妊娠・分娩・産褥(3) 門脈血栓症による完全門脈閉塞を伴った特発性門脈圧亢進症合併妊娠の1例
山崎 香織, 平井 久也, 杉村 基, 加茂 亜希, 菊池 卓, 久保 愛子, 木村 聡, 鈴木 一有, 金山 尚裕
浜松医科大学周産母子センター
【緒言】特発性門脈圧亢進症(IPH)を合併した妊娠・分娩に関する報告は極めて少なく,明確な妊娠管理の方針は示されていない.今回我々はIPHに対する治療後に門脈血栓症を発症,以後同血流途絶を伴いながら妊娠し,慎重な経過観察の上分娩に至った1例を経験したので報告する.【症例】31歳0経妊0経産婦.3歳時に心室中隔欠損,肺動脈狭窄症に対し手術施行.19歳時に学校健診にて尿糖(+),汎血球減少を認め,精査にて肝外門脈閉塞を伴うIPHおよび2型糖尿病と診断された.DMに対し食事療法,門脈圧亢進症に対し脾臓摘出,食道離断術を施行した.治療後外来通院時に肝門部に門脈血栓を認め血栓溶解療法を施行,ワーファリン内服による抗凝固療法を3年間行った後,投薬中止し経過観察中であった.今回近医にて妊娠判明し,妊娠12週当科紹介受診.妊娠中の糖尿病増悪と血栓症再発の可能性を考慮し,インスリン治療および未分画ヘパリン1万単位自己皮下注療法を開始.妊娠20週の健診時にFDP-Dダイマーが4.6μg/mlと上昇したため,入院の上未分画ヘパリン持続点滴へ変更.MRIでは門脈は完全に閉塞しているも,抗凝固療法の下,門脈側副血行路に新規の血栓を認めず,定期的なFDP-Dダイマー測定にて経過観察していた.胎児発育は良好,妊娠経過に伴う肝機能の変化やヘパリン投与による合併症もなく経過し,妊娠37週4日,分娩誘発にて2738gの男児を経膣分娩した.【結語】特発性門脈圧亢進症治療後に血栓症を合併した,極めて稀な症例を経験した.経膣分娩にて健児を得ることができたが,肝機能や合併症の管理,抗凝固療法を用いた血栓症に対する慎重な管理を行ったことが良好な転帰をたどった要因と考えられた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 44(3)
271-271, 2007
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