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第114回学術集会(平成19年10月14日(日))
【一般演題】
妊娠・分娩・産褥(4) 妊娠・分娩が契機となって発症したmassive edema of myomaの一症例
小足 有紀1), 仲村 将光1), 小出 馨子1), 長谷川 潤一1), 松岡 隆1), 大久保 和俊1), 関沢 明彦1), 岡井 崇1), 九島 巳樹2)
昭和大学産婦人科1), 昭和大学病院病理科2)
[症例]37歳,0回経妊.子宮筋腫合併妊娠の診断で近医にて選択的帝王切開術を施行,術中出血量は1590mlであった.術後1日目,原因不明のhypovolemic shockとなり当院に紹介搬送となった.来院時,意識やや鈍,脈拍163/min,血圧112/67mmHg,顔面蒼白,末梢冷感あり,Hb 5.6g/dl,Plt 18万/μlであり,輸血にて全身状態は改善した.超音波検査・CT検査では子宮後方に骨盤腔内を占拠する子宮筋腫と思われるlow densityの25×27cmの腫瘤を認めたが明らかな腹腔内出血や子宮内の血液貯留像は認めなかった.しかし翌日,貧血が進行しDICを認めたため輸血追加とDICの治療を開始したが軽快・増悪を繰り返した.入院2日目,腹痛および軽度呼吸苦の訴えあり,また,触診上,腹部腫瘤の増大を認めた.CTでも腫瘤径が30×30cmと前日に比べ増大していたため,筋腫内への出血を疑い手術を施行した.腫瘍は剣状突起まで達しており子宮とともに摘出した.筋腫は有茎性漿膜下筋腫で,4cm径の茎で子宮下部後壁に付着していた.一時的に肺水腫を併発したが手術後は急速に全身状態は改善し,術後10日目に退院となった.筋腫は13Kgで,割面は灰白色で均質であり,病理診断は浮腫様変性の強い子宮平滑筋腫であった.[考察]妊娠により有茎性漿膜下筋腫,及び妊娠子宮が増大し,筋腫の茎部に圧迫が加わることによって,静脈性の血流が阻害され,急激な鬱血と筋腫の増大を示したものと考えられる.分娩後,その茎部圧迫が更に強まり,動脈性血流は維持された状態で静脈系の血液還流が更に阻害され,筋腫内に血液が過剰な滞留するような病態となったと考えられる.このことから,hypovolemic shockの原因であったと推察された.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 44(3)
273-273, 2007
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