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第114回学術集会(平成19年10月14日(日))
【一般演題】
妊娠・分娩・産褥(5) 妊娠36週に心筋梗塞による心不全を発症した1例
澤 枝里1), 大平 哲史1), 芦田 敬1), 長田 亮介1), 金井 誠1), 小西 郁生1), 堀田 正二2), 相澤 万象2)
信州大学産婦人科1), 信州大学循環器内科2)
妊娠中に母体心筋梗塞を合併することは稀であり,合併した場合は母体死亡率が約50%に上るといわれている.今回我々は,妊娠36週に心筋梗塞による心不全を発症した1例を経験した.症例は38歳,2経妊2経産で,妊娠高血圧腎症の診断で妊娠30週に前医入院となった.また糖尿病の診断でインスリン治療が導入された.妊娠32週に前胸部痛を自覚したがその後痛みはなかったため,特に循環器系の精査はされなかった.妊娠34週頃より咳嗽,喀痰が出現し,36週0日には起坐呼吸となった.胸部X線にて肺水腫と診断され,同日当科に母体搬送となった.搬送時の心電図ではII・III・aVfで異常Q波および陰性T波が認められ,心エコーでは後下壁にほぼ運動性がなく心不全状態であった.即座に心不全,肺水腫に対する治療を開始した.ドパミン,ドブタミン等の投与により心機能は改善傾向となったが,後下壁の運動が特に低下していることから陳旧性の心筋梗塞が疑われた.妊娠継続によりさらなる心機能の増悪が危惧されたため,妊娠36週2日にSwan-Ganzカテーテル挿入の上,全身麻酔下に帝王切開術を施行した.児は2604gの男児でApgar score 9/10,術中・術後の母体循環動態に変動はなかった.帝切後33日目に心臓カテーテル検査を施行したところ,年齢に比して動脈硬化が顕著であり,右冠動脈に完全閉塞を認め,左冠動脈より側副血行を受けていた.右冠動脈閉塞による陳旧性下壁梗塞と診断された.経皮的冠動脈形成術が行われ,帝切後41日目に退院となった.今回,本症例における若年発症の心筋梗塞の原因,妊娠に心筋梗塞が合併した際の管理について考察を加え報告する.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 44(3)
275-275, 2007
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