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第114回学術集会(平成19年10月14日(日))
【一般演題】
妊娠・分娩・産褥(6) 妊娠初期に発症した上矢状静脈血栓症の一例
千賀 彩加, 木村 薫, 本道 隆明, 保倉 宏, 花岡 由里子, 左近 普子
厚生連篠ノ井総合病院産婦人科
今回我々は妊娠初期に上矢状静脈血栓症と診断され,抗凝固療法を中心とした保存的療法で全身管理を行った1例を経験したので報告する.症例は29歳の0回経産婦.妊娠6週重症妊娠悪阻のため点滴を試行した以外,妊娠経過は特に異常を認めなかった.妊娠8週自宅にて夕食摂取時,突然4-5分にわたる強直性痙攣と6分間程度の意識不鮮明が出現したため,救急車にて搬送となった.CTでは脳出血を否定できず,1時間半後のMRI試行中に再度1分にわたる強直性痙攣が出現した.CTでは右前頭葉に低吸収域と右シルビウス裂に入り込むような高吸収域と,出血を伴う静脈洞血栓を疑わせる所見と,MRIでは右前頭葉と左後頭葉に血管性浮腫の所見を認め,上矢静脈洞血栓症,脳内出血と診断,抗凝固療法を中心とした保存的療法を開始した.諸検査では,明らかな血栓性素因は検出されなかった.妊娠9週1日子宮内胎児死亡となり,子宮内容除去術を試行した.現在発症より1ヶ月経過しており,未だ不全麻痺は残るもののバイタルは特に問題なく,状態は徐々に改善傾向となっている.今回の症例では,脳血管の異常など器質的な異常はなく,また,血栓を助長するような膠原病等の基礎疾患は認めなかった.妊娠時は線溶系は抑制され,全体的に凝固能に傾いた状態であり,血栓症が起こりやすい状態となっているが,妊娠初期でありその影響は小さいと思われる.また,悪阻で血液濃縮傾向が起き,血栓を助長した可能性も考えたいが,はっきりとした原因は不明であった.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 44(3)
278-278, 2007
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