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第114回学術集会(平成19年10月14日(日))
【一般演題】
妊娠・分娩・産褥(6) 分娩中に発症したと思われるくも膜下出血の1例
神保 正利, 石崎 聡之, 吉井 明日香, 藤原 礼, 小泉 仁嗣, 坂井 昌人
東京女子医科大学八千代医療センター母性胎児科
くも膜下出血などの脳血管疾患は分娩10万例に対し10〜20例と極めて稀であるが,その発症により母体生命が危機に瀕することは決して少なくない.多くは激しい頭痛から始まり,続いて麻痺,痙攣,意識障害を起こすと報告される.今回,頭痛を伴うことなく全身性の強直性痙攣にて発症し,子癇発作との鑑別に苦慮したくも膜下出血症例を経験した. 症例は1回経産.妊娠経過に問題なく,妊娠38週より蛋白尿が著明に認められた.妊娠39週3日,陣痛発来により前医入院.分娩第2期に全身性強直性痙攣および意識障害(Glasgow Coma Scale:E2,V2,M4)が起こりDiazepam10mg,MgSO44gを投与.約1時間後には意識清明となり,この後当院へ母体搬送された.血圧は130/78mmHg,血液検査では肝機能,腎機能ともに正常,血小板減少は認められず,凝固能も異常はなかったが,随時蛋白尿は(4+)を示した.尚,胎児はwell-beingであり,同日,帝王切開術が施行された.術後1日目の頭部CTでは右前頭葉に浮腫像とくも膜下腔に出血像が認められたが,MRI,MRAにて明らかな血管病変は認められず,四肢麻痺などがないことから保存的治療が選択された.術後経過は順調であり,頭部CTでは術後34日目に出血および浮腫病変は消失した. 血圧は正常域であったが蛋白尿が高値を示し,また頭痛を伴わない痙攣の出現から分娩子癇が強く疑われた症例であったが,くも膜下出血においても頭痛を伴わない症例の報告があり,その鑑別には画像診断は極めて有用であると考えられた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 44(3)
278-278, 2007
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