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第114回学術集会(平成19年10月14日(日))
【一般演題】
妊娠・分娩・産褥(7) 既往帝王切開後の前置胎盤(癒着胎盤)の2症例
伊野塚 喜代乃, 和地 祐一, 橋本 玲子, 松島 実穂, 酒井 啓治, 橋口 和生, 岩下 光利
杏林大学産婦人科
既往帝王切開後の妊娠にて前置胎盤をみとめ,最終的に単純子宮全摘術にいたった2症例を経験したので報告する.症例1は37歳3G2P,31週にて全前置胎盤および切迫早産の診断をうけ当院搬送となった.胎盤は前回帝王切開時の筋層切開部にかかる全前置胎盤であった.切迫早産の治療おこなうも35週にて陣痛発来あり,緊急帝王切開を施行した.児を娩出後胎盤剥離するも癒着強く剥離困難であった.また大量出血を認め止血困難であることから単純子宮全摘術に術式を変更した.総出血量は6433mlであった.病理所見上穿通胎盤をみとめた.症例2は34歳3G3P,18週より全前置胎盤の診断うけ当院へ紹介受診となった.32週より管理入院とした.胎盤は症例1同様前回切開部にかかる全前置胎盤であり超音波ドプラー法およびMRIにおいて癒着胎盤を疑った.37週にて手術施行した.術前より癒着胎盤が強く疑われたため本人と相談の上,児を娩出後胎盤剥離操作は行わずそのまま子宮全摘術を施行する予定とした.また尿管損傷予防のため尿管ステントを挿入した.術中,子宮切開部を縫合したのち速やかに単純子宮全摘術を施行した.尿管の同定も容易であり胎盤剥離を行わなかったため出血も少なく総出血量は1989mlであった.病理所見上楔入胎盤をみとめた.既往帝王切開後の前置胎盤において癒着胎盤の頻度は数十パーセントにいたるといわれており,その診断は超音波断層法,MRIなどによるが正確な診断は困難なことが多い.しかし癒着胎盤において術中胎盤剥離することが大量出血の原因になることが多いことから,癒着胎盤有無の十分な精査および術式の検討が必要であると思われた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 44(3)
280-280, 2007
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