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第114回学術集会(平成19年10月14日(日))
【一般演題】
妊娠・分娩・産褥(8) ジベレスタットナトリウムを用いた集学的管理にて好転帰をとった妊娠23週切迫早産の一例
中島 義之1), 古田 賢1), 大亀 幸子1), 後藤 瑞穂2), 後藤 俊二2), 前出 喜信2), 坂本 理恵2), 加藤 英二2)
社会保険船橋中央病院周産期母子医療センター産科1), 社会保険船橋中央病院周産期母子医療センター新生児科2)
子宮内感染やFetal Inflammatory Response Syndrome(FIRS)は,早産や新生児感染と関連し,好中球エラスターゼが深く関与している.今回我々は,好中球エラスターゼ阻害薬であるジベレスタットナトリウムの母体投与を含む集学的管理にて妊娠延長できた切迫早産の一例を経験したので報告する. 症例は32歳初産婦.自然妊娠成立後,妊娠23週0日切迫早産のため母体搬送入院した.入院時,子宮口3cm開大,子宮出血,腟内胎胞膨隆を認めた.母体温38.0℃,白血球数23700/μl,CRP 9.43mg/dl,胎児心拍数170回/分,子宮収縮は規則的で,絨毛羊膜炎やFIRSの存在を示唆した(早産スコア7点).子宮頸管粘液エラスターゼ20.4μg/ml,羊水中IL-6 80500pg/ml,IL-8 24100pg/mlであった.塩酸リトドリンと硫酸マグネシウムにてtocolysisし,抗生剤点滴,ウリナスタチン腟内投与を連日行った.さらに妊婦に同意を得た上で,ジベレスタットナトリウムの母体持続静注療法を併用した.治療後,母体温はすみやかに正常化し,検査上も白血球数7100/μl,CRP 0.76mg/dlと著しく改善し,合併症もなく妊娠期間を1週間延長することができた.妊娠24週0日に陣痛発来し足位のため,緊急帝王切開術施行し,696gの男児(アプガールスコア2点;5分5点)を分娩した.羊水中IL-6 38500pg/ml,IL-8 4950pg/mlと低下し,臍帯血検査では白血球数4100/μl,CRP 0.01mg/dl,IgMも陰性で,IL-6 19.4pg/ml,IL-8 52.3pg/mlであった.児はIVHを認めたものの,明らかな感染は認めていない.母の産褥経過も順調である. ジベレスタットナトリウムが母児の重篤な副作用なく,炎症反応やサイトカイン値を改善し,妊娠期間を延長させる可能性を示唆した.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 44(3)
283-283, 2007
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